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セリエAの優勝争いが熱い!
ナポリはユーベ7連覇を阻止できるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/02/22 10:30
25節終了時点で首位ナポリと2位ユベントスの勝ち点差は1のまま。得失点差ではナポリの40に対して、ユベントスが47と上回っている。
監督が退場処分になっても焦らない。
ナポリの大きな変化は“勝ち点3への執念”にも現れている。
24節ラツィオ戦はタイトルへの試金石の1つだった。
前日の2月9日にフィオレンティーナを破ったユーベにやはり暫定首位を奪われた状況で、復帰予定だったDFグラムが前日に再負傷、代役のDFキリケシュにも筋肉疲労が発生し、急遽DFトネッリが先発する緊急事態に。
ナポリは2週間前のボローニャ戦同様、あえなく先制を許した。前半終了間際には相手のラフプレーに抗議した指揮官サッリが退場処分に。相次ぐ逆境にナポリの首位再奪回はここで途絶えるか、と思われた。
「監督の退場? いや、全然気にならなかったし、不安もなかった。試合中の俺たちは集中してるから」(FWカジェホン)
昨季までのナポリなら、焦ってプレーリズムがバラバラになり引き分けに持ち込むのがやっと、というパターンだ。
だが、そんなメンタルの弱さは今季のチームには見当たらない。
過去2季タイトルに届かなかった経験を踏まえた彼らは、2タッチ以内でボールを回すパスワークで自分たちのリズムをきちんと再構築することを覚えた。
なので、後半の終盤でもアタックの精度は高いまま。むしろ時間の経過とともに相手の疲労度と反比例して、1本のパス、1本のシュートがより研ぎ澄まされていく感すらある。
フィジカルを前面に押し出したラツィオのハイプレスのペースが落ちると、ナポリの選手たちは冷静にボールをコントロールしながら反撃のゴールを後半に連発、逆転に成功した。
「おい、俺たちスゴい1本を決めたよな?!」
息を呑んだのは終盤73分、ナポリの4点目だ。中盤の司令塔ジョルジーニョからMFジーリンスキを経由して、FWメルテンスが右足アウトサイドで流し込んだ。
司令塔の縦への長いスルーパスからジーリンスキのドリブルと多重フェイント、エースのフィニッシュまで、まさに流れるようだった。あんなゴールは守備の国の実戦でまずお目にかかれない。誰もが眼福にあずかった気分だった。
“おい、俺たちスゴい1本を決めたよな?!”
ゴール後、プレーに関わった3人だけでなくチーム全員が胸を突き合わせ、目を丸くして自分たちがやってのけたテクニカルゴールを喜んだ。至高の一撃はチームに活気を与える。
アシストを決めたMFジーリンスキの台頭も目覚ましい。機動力抜群のサッリ流サッカーの申し子は、ポーランド代表としてロシアW杯で日本代表の前に立ちはだかる可能性が高い。