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小平奈緒が李相花へかけた言葉。
「チャレッソ」の意味と2人の友情。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2018/02/19 11:30
レース後には、ふたりで一緒にリンクを回って観客に感謝を伝えていた小平と李。
「全てが報われた気持ちです」
ソチ五輪後にひざとふくらはぎを痛めていた李は、やっとの思いで負傷からよみがえり、母国で迎える自身4度目の五輪に全精力を傾けてきた。
しかし、タイムは伸びずに37秒33で2位。
最終16組の選手もトップ争いには加われず、小平の金メダルが決まった。2位の李に0秒39の差をつける圧勝だった。
小平は'10年バンクーバー五輪で12位、'14年ソチ五輪で5位。その2大会で頂点に立った李を抑えての、悲願の金メダル。自然と涙があふれた。
「涙で周りが何も見えないくらいうれしかった。500mに対しては自信があるという強い気持ちで滑った。全てが報われた気持ちです」
この日のメダルは小平にとって女子1000mに続く今大会2つ目のメダルであり、'10年バンクーバー五輪女子チームパシュート銀メダルと合わせると計3つ目となった。
冬季五輪の日本女子選手としては最多という勲章も加わった。
小平がかけた言葉……「チャレッソ」。
日の丸を肩に掛け、歓喜に浸りながらウイニングランをしていた小平が足を止めたのは、太極旗を手にしながら泣きじゃくる李の姿を見つけたときだった。
小平は李のそばにそっと近づいた。そして抱きしめた。
「チャレッソ(韓国語で『よくやった』の意味)」
好敵手であり、良き友人である李をねぎらった。
「サンファ、たくさんの重圧の中でよくやったね。私はまだリスペクトしているよ」
李も小平に「ナオこそ『チャレッソ』よ」と返した。