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ついにMotoGPに日本人ライダーが復活!
26歳の中上貴晶が狙う、夢の表彰台。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2018/01/27 09:00
テストでは最高の走りを見せてきた中上。あとは……MotoGPの本番でどれだけ実力を出し切れるか、にかかっている。
「腕上がり」の症状で、筋膜にメスを入れる決断を!
しかし、ペドロサに匹敵するタイムを出したといっても、一昨年のスペインGPは、ミシュランタイヤにとっては復帰したばかりのレース。加えて、4月と12月では気象条件がまったく違い、比較の対象にならないと疑問を投げかけるスタッフも多かった。
実際、MotoGPクラスのレギュラー組と初めて一緒に走った昨年の最終戦バレンシアGP後の合同テストでは、20数台の中で18番手前後。1年前の初ライドで得た自信からはほど遠かったが、Moto2チャンピオンで、ホンダチームからMotoGPクラスにスイッチするフランコ・モルビデリ(23)とタイムも内容も拮抗しており、その点では順調な初テストだった。
だが、バレンシアテストに続いて行われた2日間のヘレス・テストでは、初めて「腕上がり」の症状を経験することになる。
「腕上がり」とは、筋肉を酷使することで血流が増加、その結果、増大した筋肉が筋膜を圧迫する症状のことで、ひどい痛みを伴い力が入らなくなる。それを改善するために筋膜にメスを入れるという手術を受けるライダーは多いが、中上も、ヘレス・テスト終了後にバルセロナの大学病院で手術を受けた。
「バレンシアに比べてヘレスは体力的に厳しいサーキットだった。Moto2マシンに比べてもMotoGPマシンに要求される体力ははるかに高い。とにかく、圧倒的に加速が速くて、マシンの切り返しなど、これまでにない素早い身体の動きが要求される。その結果、腕がぱんぱんになって力が入らなくなりアクセル操作ができなくなってしまった。
もし、腕上がりのせいで成績を残せなかったらどうしよう。やっとたどり着いた夢の舞台でちゃんと走れなかったら、という恐怖心が生まれた。そこで、テストを終えてすぐにバルセロナに行って(MotoGPの主治医の)ミル先生の手術を受けることにした」
家族で作った“チーム中上”で、引き続きMotoGPに挑戦!
わずか2回のテストだったが、この経験は、いろんな準備につながった。
初めて経験した腕上がりという体調面の不安をシーズン開幕に向けて解消することが出来た。さらに今年は、母・由比子さんをマネージャーに、イタリア在住の姉・百世(ももよ)さんをヘルパーに“チーム中上”を結成。
Moto2クラス最後のシーズンとなった昨年、この体制にトライしたが、予想以上にレースに集中できることを実感したことで、今年から本格的にこの体制で挑むことにしたのだそうだ。