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ユーベやナポリのオファーを蹴る!
セリエA、地方LOVEな男たち列伝。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/01/25 11:00
リーバはセリエAでは通算241試合で143得点を挙げ、3度の得点王に輝いた。イタリア代表でも通算35得点で'70年W杯の準優勝に貢献。
魅惑すぎるユーベ、ミラン、インテルのオファー。
一方で、1987年にナポリを優勝させたOB監督ビアンキは首位にいる古巣が袖にされたことに納得がいかない。
「やれポジションごとのチーム内序列だの、やれ控え選手のプレー分数だのとベルディは小うるさく代理人と話し合ったのだろう。まったく今どきの若者は……」
ベルディは目の前の金銭やタイトルの可能性より自分の心に従った。
ただ、プロのサッカー選手ならより高待遇、よりレベルの高い環境へ行きたいと願うものだ。
カルチョの国では、人気も資金もタイトルも長くユベントスとミラン、インテルという北部の3クラブがほぼ独占してきた。だから、彼らからのオファーはサッカー人生で決して逃してはならない、とされている。
「俺はサルディーニャを離れない」と貫いたリーバ。
「いいや、何度言われてもNOだ」
北の3強からの誘惑に抗った男といえば、筆頭に上がるのは1960~70年代の伝説のストライカー、ルイジ(通称ジジ)・リーバだろう。
離島サルデーニャのクラブ、カリアリで'63年から通算13年間プレーし、3度得点王を獲得。'69年のバロンドール投票では受賞したジャンニ・リべラにわずか4票及ばず2位だったが、翌70年、クラブ史に燦然と輝くスクデットの立役者になった。
ゴール前の嗅覚と左足の強力なシュートを武器にイタリア代表としても活躍した。代表通算35ゴールは今もアズーリ歴代最多記録だ。
当時のインテル会長アンジェロ・モラッティは毎年クリスマス前に、リーバへピカピカの英ポンド金貨を贈ってきた。名門ユベントスは破格の10億リラを積み上げた。
だが、「俺は島を離れるつもりはない」とリーバは首を横に振り続けた。
「今でこそサルデーニャ島は風光明媚な観光リゾート地とか言われているが、('63年に)俺がカリアリに来たとき、ここは“島送り”って言葉がぴったりだった。ボロボロの飛行機の窓から砂漠みたいな景色を見て、“ここはアフリカか”と思ったくらいだ」