プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「噛ませ犬」事件から35年が過ぎ――。
昭和の“革命戦士”長州力の現在。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2018/01/18 11:00
老いたりとはいえ、その“革命戦士”としての目の輝きは変わらない。その闘争の遺伝子を、長州は果たして誰に伝えていくのか……。
試合が無い時期も、ずっと長州は道場で練習していた。
あれから、35年。
長州はメインに出場する6人の一番先に黒いTシャツ1枚でリングに上がった。主催者としてのゲストに対する心遣いなのだろうが、この行動は昔を知っている者にとっては驚きに近いものであった。
シャツを脱ぎ捨てると、そこにはビルドアップされた肉体があった。よく見れば、その66歳という年齢を感じ取ることはできる。でも、よく張った筋肉に長州の気持ちが感じられた。試合がなくても道場での練習は続けてきたのだ。
長州はまず藤波と手を合わせた。あれから何度、戦ってきただろう。
2人とも、ひとつひとつはもうよくは覚えていないというが、真夏の40度以上のうだるようなリングで戦ったこともあった。
もういいだろう、と思うこともあった。
でも、すべては過ぎ去りし日々の記憶。
リキ・ラリアット、サソリ固めも繰り出した!
長州は時計の針を、過去から現在に戻すと、唐突にリキ・ラリアットを思いっきり関本に叩き込んだ。ぶち当てた腕よりも、胸の筋肉に痛みが走った。それくらい勢いのあるラリアットだった。
ロープ際だったが、サソリ固めも見せた。
有無を言わさず、力ずくでひっくり返した。
地味だと言われたスコーピオン・デスロックも、いつしかラリアットと並んで長州の代名詞になっていった。
リングサイドでは日本サッカー界のレジェンドである釜本邦茂さんも笑顔で声援を送っていた。