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深夜、モスクワからの国際電話。
カズさんが話したかったこと。
text by
瀬尾泰信(Number編集部)Yasunobu Seo
photograph byKazuyoshi Miura
posted2018/01/04 07:00
ドログバ、ロナウジーニョ、プジョル、セードルフら……FIFAレジェンドたちと共に食事を。日本人選手でここまで世界と渡り合える選手は、そうはいない。
最も多く“ハコ乗り取材”をしたアスリート。
スマートフォンを耳にぐっと押し付ける。
「……明日午前11時40分、成田に来れたりする?」
ん?? どゆこと??
「カズがさ、話したがってるんだ。こっちでいろいろ感じたことがあって、伝えたい、って」
一体何を?
「これからフライトなのね。で、成田に明日の11時40分に着くから、そこから車で都心に戻る間にインタビューしてもらえたらと思うんだけど」
いわゆる、ハコ乗り取材。
実はカズさんは、これまでの取材経験の中で、ハコ乗り取材を最も多く受けていただいたアスリートだ。ヴィッセル神戸時代なども、いぶきの森にある練習場から市内中心部のカズさんいきつけのカフェやご自宅まで、カズさんのポルシェやレンジローバーの助手席に同乗して、さまざまお話を伺っていたことがあった。取材者としてカズさんを独り占めできる、この上もなく贅沢な時間。思いがけなくも、アレをまた味わうことができる……。
「わかりました。成田にうかがいます」
逃す手はない。そして明日の予定は──動かすしかない。
「無理言ってごめんね。じゃ、これから搭乗だから。よろしく」
眠れぬままネット検索をすると、いつもの笑顔が……。
慌ただしく電話が切れた。
すぐに乗り換え案内のアプリを起動して、成田エクスプレスの時間を確認して目を閉じた。
が……眠れるはずがない。
ベッドを抜け出すとPCを開いて、抽選会に関するニュースを検索した。
「W杯抽選会にFIFAレジェンド集結!」──会場の入り口だろうか、赤い手袋を脱いで、大きく報道陣に左手を上げているスーツ姿のカズさんは、ディスプレイの中で引き締まった笑顔を見せていた。いつものカズさんと同じで、堂々としていて、いつもながらのかっこよさだった。