JリーグPRESSBACK NUMBER
坪井慶介は燃え尽き方を知らない。
湘南から山口、38歳は今日も走る。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/01/07 11:30
身体能力を武器にする選手にとって、年齢は最大の敵である。しかし坪井慶介は、自らの成長を確信しているのだ。
オフト、フィンケ、ミシャの下で学んだもの。
'02年に福岡大から浦和へ加入し、プロ1年目からハンス・オフト監督に高い身体能力を買われて、レギュラーの座をつかんだ。オランダ人監督に守備のイロハを叩き込まれ、プロのディフェンダーとして生きていく術を身に付けた。
その後、浦和は監督が次々と交代したが、そのたびに求められるものを必死に習得し、'12年までは主力として活躍。フォルカー・フィンケ監督時代にはハイラインをコントロールし、慣れないオーバーラップも見せた。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の就任初年度となった'12年シーズンには、苦手だったビルドアップに果敢にトライし、3バックの一角として33試合に出場。いくつもの壁を乗り越え、キャリアを重ねてきた。
丸刈り頭一筋のプロ生活も、もうすぐ17年目。
'15年に加入した湘南での3シーズンは、リーグ戦で計28試合出場と納得のいくものではなかったが、きつい練習に全力で取り組んだ。若手と同じメニューをこなし、曹貴裁監督が求めた「走って戦うこと」を愚直に遂行。練習試合でも一切手を抜かなかった。
陰の努力は、報われた。山口の霜田正浩監督には、限られた公式戦と練習試合でのパフォーマンスを評価された。経験値だけでなく、現在38歳の能力を認められ、42試合にフル出場してほしいと言われている。他に興味を示すクラブもあったが、坪井に迷いはなかった。
「やっぱり、選手として試合に出て、力を出したい。僕としてもチャレンジだし、チームとしても新しいことに挑戦していこうとしている。本当に楽しみ」
12月下旬から、新シーズンに向けて、もう準備を始めている。オフ期間中も少しでも体を動かし、コンディションを整えている。何年経っても、ひたむきな姿勢は変わらない。長年、坪井の代理人を務める秋山祐輔氏はしみじみと話す。
「引退後のことも考えず、選手として目の前のことを一生懸命にやっている。次の日、次の週、次の試合に向けて、地道に地味な努力をずっと続けている。それが坪井慶介」
丸刈り頭一筋で貫いてきたプロ生活も、もうすぐ17年目のシーズンを迎える。
「どうすれば、僕は燃え尽きるんでしょうね? その答えが分からないんですよ」
目尻に少ししわができ、3児の父となっても、からっと笑う現役のサッカー小僧は、まだまだ走り続ける。