ラグビーPRESSBACK NUMBER
南ア戦に衝撃を受けて銀行を辞め……。
中澤健宏がラグビーに帰ってきた。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2017/12/07 10:30
南アフリカ戦でジャパンが起こした奇跡が、1人の男の運命を変えた。中澤健宏はラグビーの神に気に入られているのだろうか。
みずほ銀行を辞めたのは、南アフリカ戦を見たから。
2016年4月、2年間務めたみずほフィナンシャルグループを退社してリコーに途中入社。2年目の今季、トップリーグ前半戦最終節の神戸製鋼戦に先発FBでトップリーグデビューし、この試合でいきなりマンオブザマッチを獲得する大活躍。1カ月の休止期間をはさんで再開したリーグ戦第9節のNTTドコモ戦でもFBで先発し、後半21分にトップリーグ初トライまで決めてしまった。
「いえ、トライしたといっても、パスをもらってボールを置いただけですから」
中澤は照れくさそうに言ったが、ゴール前で体勢を崩した味方から放たれた不規則なパスを、やはり不規則な姿勢でしっかりキャッチしてボールを置いた、地味ながら質の高いプレーだった。
勤務していた銀行を辞めてラグビーに舞い戻ったきっかけは、2015年ワールドカップでの日本代表の快進撃だった。日本が南アフリカに勝った試合を見たとき、『次のワールドカップでは、自分と同世代の選手たちが活躍するのか……』という思いがわき上がった。そう思ったら、いても立ってもいられなくなった。
トライアウトはタックル一発で即採用!
「大学を卒業するときは、ラグビーを10年くらいやって引退して仕事に戻ろうとしても、それまでずっと仕事に打ち込んできた同期とはすごく差がついてしまってると思っていたんです。でもそれまで1年半仕事をしてみて、働きながらでもラグビーをできるんじゃないかという気持ちになっていた。だったら今しか出来ないことにチャレンジしてみたいという気持ちになったんです」
知人を介してリコーのトライアウトを受けたのが2015年の秋。練習生としてチームの練習に参加し、サニックスとの練習試合に出場。そのとき、ワールドカップの南アフリカ戦で、あの逆転トライを決めたWTBカーン・ヘスケスを1対1のタックルで止め、そのままタッチへ押し出した。
「もう、それで一発合格、即採用! でした」