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南ア戦に衝撃を受けて銀行を辞め……。
中澤健宏がラグビーに帰ってきた。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2017/12/07 10:30
南アフリカ戦でジャパンが起こした奇跡が、1人の男の運命を変えた。中澤健宏はラグビーの神に気に入られているのだろうか。
中途採用は例外だったが、銀行員経験がプラス評価に。
リコーの神鳥裕之監督は笑って振り返る。
「リコーも、ラグビー部の中途採用は基本的にナシだったんです。でも、銀行で2年間実務についていたこともプラスに評価してもらえて、ラグビーだけでなく社会人としてのポテンシャルも期待して、特例として採用してもらえたんです。本当に会社の理解のおかげです」
銀行員時代は、練習は土日だけ。関東社会人1部リーグで試合には出場したが、平日のトレーニングもほとんどできなかった。だが、その2年間をマイナスだったとは思っていないという。
「銀行で働けたことは良い経験になっています。社会人1年目は、本当に自分には何もできない、先輩も忙しい、職場はセキュリティが厳しくて朝早く入ることも残業することもできない、そういう中で先輩の仕事ぶりを見て学んだり、営業の仕事をするときに窓口の人と連携することの大切さを学んだり。外回りの営業で案件が進んだとしても、それを中の事務作業でしっかりフォローしないとだめ。
銀行で、仕事の仕組みを学ぶことができたのは自分の財産です。だから、大学を卒業したときの決断については、まったく後悔していません」
銀行員時代の上司や知人が秩父宮に駆けつける。
2年間の銀行員生活は、中澤に個人サポーターも作った。
「銀行員時代にお世話になった方々が、本当に今も応援してくださっているんです。田無支店にいたときの支店長が今は恵比寿に移ったんですが、きょう秩父宮にも来てくださって、田無支店の方々もたくさん来てくださいました。中学、高校からの同級生や知り合いもいっぱい応援に来てくれましたね。うれしかったです」
とはいえ、舞い戻ったラグビー生活も順風だけではなかった。昨年は出場試合ゼロ。「チームで求められることが多すぎて、思い切りのいいプレーが全然出なくなっていた」と神鳥監督は昨季の中澤を振り返る。