ラグビーPRESSBACK NUMBER
南ア戦に衝撃を受けて銀行を辞め……。
中澤健宏がラグビーに帰ってきた。
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2017/12/07 10:30
南アフリカ戦でジャパンが起こした奇跡が、1人の男の運命を変えた。中澤健宏はラグビーの神に気に入られているのだろうか。
近道はしていないけど、回り道もしていないと信じて。
転機は今春のニュージーランド留学だったという。ウェリントン郊外ポリルアという町のノースというクラブで、3カ月にわたってラグビー漬けの生活を送った。
「去年は、リコーのラグビーを理解してそこにフィットしようということばかり考えて、自分の持ち味とか考えられなかった。でも外国に行って、言葉も通じない、自分を知っている人も誰もいないところに行って、待っていても全然ボールはもらえない。自分で積極的にアピールしてボールをもらうようになりました」
帰国後、周囲がどうしたいかを気にするよりも、自分の持ち味であるフィジカルの強さを思い切って出そうと意識すると、活躍の場が広がった。周囲も自分を認めてくれるようになった。
そしてトップリーガーとして公式戦の芝を踏み、突進を繰り返し、タックルを決め、トライも決めた。日本のトッププレーヤーのひとりとなった。
転職するとき、目標に据えた2019年ワールドカップまでは2年を切った。
「目標にしていることに変わりはありません。ただ何というか、今は目の前の目標だけに集中しようと思っています。トップリーグで自分が戦って行くには、まだまだ自分のスタンダードを上げていかないといけないし。だからその先の目標は、まだ自分の中に秘めておきたい(笑)。どちらにせよ、自分のプレーヤーとしてのピークはまだ先だと思っていますから」
回り道をしたとは思っていないという。
「ラグビー人生はまだ長いと思っています。近道はしていないと思うけど、まだまだ上を見ていきたいです」
キーワードは「まだまだ」。帰ってきた男、中澤健宏は、前を見て走り続ける。