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浦和をアジアの頂点に導いた男。
ラファ・シルバを支える母の言葉。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byAFLO
posted2017/12/07 17:00
加入1シーズン目にして12ゴールを決め、浦和の前線に定着したラファエル・シルバ。海外からの注目度も急激に上がっている。
信じた道をまっすぐに進んだ先に、世界はあった。
「無我夢中だったから、一体、何が起きたのかよく分からなかった」
ラファエル・シルバが気付いた時、燃えるように歓喜する真っ赤なサポーターが目に飛び込んだ。そしてチームメイトが笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。
「第1戦で負った怪我を乗り越えるのは思っていた以上に大変だった。でも、たくさんの声援が僕を後押しして、さらに強くしてくれた。(優勝決定の瞬間は)笑って、泣いて……喜びを爆発させて、最高にエキサイトなシーンだったよ」
第1戦後、懸命にリハビリに取り組む姿を間近で見守ってきたのは、ロドリゴ通訳だった。SNSによる騒動が飛び込むなか、ラファエル・シルバはプロフェッショナルに徹し、コンディションを仕上げてみせた。優勝決定直後には、ロッカールームから2人でバナナを食べる差別反対のメッセージ動画をSNSにアップした。
ラファエル・シルバは、まっすぐ突き進みゴールを奪った。準決勝からの4試合で3ゴール。圧巻の活躍ぶりで、浦和レッズを10年ぶり2度目のアジア制覇に導いた。表彰式の行われるピッチ上には、ロドリゴ通訳と抱き合って2人で男泣きする姿があった。
「信じた道をまっすぐ進みなさい。前向きに」
気丈だった母の言葉は、今でも宝物だ。心の中でダイヤモンドのように輝き光を放っている。12月9日、浦和のクラブW杯が始まる。アジアから世界へ――切り拓いたその道を、ラファエル・シルバが突き進む。