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2度目のブンデス、2部レンタル……。
宇佐美貴史が今、考えていること。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byBongarts/Getty Images
posted2017/11/21 11:00
10月30日、ボーフム戦での宇佐美。攻守ともに奔走していた彼だが、まだまだ本領発揮とはいかないようだ。
昨年より良いが……定位置を確保し切れてはいない。
ボーフム戦を終えて、かつて高原直泰、稲本潤一、乾貴士、大迫勇也といった日本人選手たちを指導した“伯楽”フンケル監督から、宇佐美に「要求」があったという。11月5日に行われた1.FCハイデンハイム戦の「前々日くらい」のことだ。
背番号33は自身のコンディションの状態などを伝え、「ポジティブな話ができた」。しかし、「要求」された直後のハイデンハイム戦で、出番は訪れなかった。
後半のアディショナルタイムから唐突に加速したシーソーゲームに、宇佐美は参戦できなかった。
昨季に比べれば、少しずつ状況は改善しているかもしれない。既に2ゴールを決め、毎試合のように試合に出場してきた。だが、定位置を確保し切れてはいない。「現実」を前に、依然としてもがいているようでもある。半年以上前にアウクスブルクの練習場で語った「理想」を、宇佐美は、心の中に今も掲げているのだろうか。
「相手の状況に合わせてサッカーをしないと……」
この11月の代表ウィーク、デュッセルドルフの練習場――。
程近い空港からひっきりなしに離陸する飛行機の轟音が、灰色の空を引き裂いている。
宇佐美は「(理想は)変わらずです」と言い切った。
「僕がイメージしている理想と、サッカーをしている人で、僕のことを、僕のプレーを見ている人は、たぶん、その理想は同じ感じだと思う」
かつてそのプレーに魅せられた者であれば、誰もが抱く期待=「僕がイメージしている理想」。変わらず心の中に抱いていた。
「(理想は)もちろん掲げている、掲げるっていう意味ではボールコンタクトが多く、チーム全体として多くて、自分にもボールがよく入ってくる、だから1回のボールコンタクトにこう、固執しないでいいくらいボールがポンポン入ってくるっていうサッカーの中に、自分の身を置けるっていうのが理想ですけど」
厚い雲を掻き分ける飛行機の轟音が響き渡る。
宇佐美の声に芯が通る。
「でも、それを常に掲げられて、それが常にプレーできるチームっていうと、本当に世界のトップ・オブ・ザ・トップというか、それぐらいの強豪チームしかない。どんな相手にもまず自分たちがボールを保持できるようなバイエルン、バルサとか、そういうチームにいるわけじゃないし、相手の状況に合わせてサッカーをしないといけないので。
誰でも理想はそういうサッカーがしたいと思いますけど、現実的に、しないといけないプレーとか、守らないといけないタスクはあるので」