欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
2度目のブンデス、2部レンタル……。
宇佐美貴史が今、考えていること。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byBongarts/Getty Images
posted2017/11/21 11:00
10月30日、ボーフム戦での宇佐美。攻守ともに奔走していた彼だが、まだまだ本領発揮とはいかないようだ。
フォルトゥナは「バイエルン」ではない。
「理想」と「現実」の擦り合わせ――アウクスブルクでは、その隔たりは果てしなかった。
「去年のアウクスブルクに関しては攻撃的な部分は、ほぼほぼ皆無でしたし、ボールが入ってきても、もう全員が疲れている状態、ほぼほぼエネルギーが残っていない状態だったんで、まあ、ここではそんな感じではないですし、はい」
「ここ」=フォルトナ・デュッセルドルフは、2部で首位を走るチームだ。
ホームのエスプリ・アレナでは、昇格に飢える観衆の情熱に乗せられて、時に不器用にでもボールを回していく。
もちろんフォルトナは「バイエルン」ではない。
フロリアン・ノイハウス、マルセル・ソボトカ、ベニト・ラマンといった20代前半の野心溢れる選手たちが躍動しているが、若さ故の脆さもある。対戦相手を常に圧倒できるわけではない。それでもアウクスブルクに比べれば、宇佐美にとって「強み」を発揮しやすい環境だ。
フンケル監督からの「要求」とは、どちらかと言えば、守備に関するものではなかったという。
「攻撃的な要求のところが多かった。今見せているプレーと、もう少しのところ。攻撃的なところで、具体的にっていう」
指揮官は宇佐美の「強み」を必要としている。
可能性は残されているのだ。
あくまでも……「理想」の旗を降ろすことはない!
――最後に。サッカー選手は「理想」と「現実」のバランスを、どのように取ったらいいのだろう?
「もう僕だけじゃなくて全員が持っているものだと思いますし、したいプレーと要求されるプレーが違うジレンマとかっていうのは、誰しもあるところだと思うので、うーん……そうですね。まぁただ自分のプレースタイルにしても、サッカーのスタイルにしても、理想を掲げることを止めてしまうことは選手としてしちゃいけないこと、サッカー選手としてしちゃいけないことだと思いますし。
なんとなーくチームのサッカーに合わせて、なんとなくのプレーで終わる、っていうよりはね。
そういう部分は、やっぱリ忘れないようにしないと、自分が試合に出る意味はないと思う。それがいわゆる個性だと思うし、その個性をどれだけ、どんな状況であれ強く出すことができるかっていうことが、一番大事かなと思います」
「理想」=サッカー選手であれば、掲げ続けなければならないもの。
「理想」=サッカー選手を、ピッチの上で輝かせるもの。
「理想」=宇佐美の心の中で、揺るがないもの。
「現実」を直視する者であれば、その旗を降ろすことは、許されない。