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2度目のブンデス、2部レンタル……。
宇佐美貴史が今、考えていること。
posted2017/11/21 11:00
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph by
Bongarts/Getty Images
もがいていた。
「クリアにしていきたいですね、もっと頭を」
凍てつく寒さが瞬時に沸騰したシーソーゲームに、参戦できなかった宇佐美貴史。胸の奥から言葉を吐き出した。
2017年2月、枯れ木のシルエットが冬の大地を覆い尽くしていた頃――。
2月5日、ベルダー・ブレーメンを迎え撃ったFCアウクスブルクは、守備を免除された敵の2トップ=マックス・クルーゼとセルジュ・ニャブリに手を焼きながら、ようやく3-2で勝ち切った。
勝ち星を手繰り寄せたのは、後半のアディショナルタイムのこと。エースFWラウル・ボバディーヤの一撃に、WWKアレナは、我を忘れて歓喜に酔いしれた。
熱に浮かれたゲームの傍で、背番号39はピッチの脇で体を温め、向こう側を眺めるだけだった。マヌエル・バウム監督から声が掛かる気配はない。
出番は、最後まで訪れなかった。
2度目のブンデス挑戦も、ずっと不遇だった宇佐美。
翌日、勝利の余韻が残る練習場――。
サブ組でトレーニングを終えた宇佐美は、「原点」を強調した。
「昨日、頭の中をクリアにするって言ったのは、もう本当に原点に立ち返る、一回。いろんなやることも多いですけど、それ考えるのも大事ですけど、一回、原点に帰るところじゃないか、みたいな意味で言ったんです」
'16年の夏、2度目のブンデスリーガに挑んでいた宇佐美だったが、半年を経てなお、ポジションを確保できていなかった。