球道雑記BACK NUMBER
“機動破壊”の衝撃から3年後……。
前ロッテ脇本直人のリスタート。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/15 07:00
健大高崎の強打者として甲子園で輝いた姿を覚えている人も多いはず。脇本の野球人生はまだまだ続く……。
「いつか自分もプロ野球の舞台で成りあがるんだ」
プロ入り前に、知人に勧められて読んだ矢沢永吉の著書『成りあがり』は彼のバイブルになっている。幼き頃の矢沢の境遇と、自身のこれまでを重ね合わせ、「いつか自分もプロ野球の舞台で成りあがるんだ」と、胸の内に熱い想いを秘めている。
10月3日に千葉ロッテから戦力外通告を受けると、その直後はさすがに落ち込む姿が見られたが、地元の群馬県沼田市に戻って、家族や友人、さらには健大高崎高時代の指導者やチームメイト達と会って、再び元気を取り戻した。
「周りはいつも通り変わりなく接してくれましたし、そこがまた嬉しかったですね。逆に向こうから『あまり気にするなよ』とかも言ってもらったりしました」
二軍の育成現場にも影響した、一軍の低迷。
千葉ロッテに在籍した3年間は守備、打撃、走塁の全ての面で思うようにいかず、特にプロ1年目は精神的にも浮き沈みを繰り返した。
「それでも『絶対に腐らない』と決めて、やって来ましたし、その結果が今年のシーズン後半になって、やっと出てくるようにもなっていたので……。それでクビになったのならしょうがないかなと……。言われたときは悔しかったですけど、後悔はなかったですね」
今季は一軍の低迷もあって、伊志嶺翔大、岡田幸文、荻野貴司、清田育宏、細谷圭といったレギュラークラスが「調整」で二軍にいる期間が長く、出場機会に恵まれなかった。
今季の打撃成績は100試合165打数24安打、打率1割4分5厘。全ての面でプロ2年目となった前年の成績を下回っているが、試合出場のほとんどがレギュラークラスが1、2打席立った後の、途中交代だったことを思えば、やや気の毒にも思える。
対戦する相手投手もストッパータイプのピッチャーがほとんどで、直球を差し込まれないように自分のタイミングで打つこと以外の対策をとることが正直なところ難しかった。打ち取られたのは、その辺りの心理を相手バッテリーが逆手にとり、変化球を振らされたのがほとんどだ。