球道雑記BACK NUMBER
“機動破壊”の衝撃から3年後……。
前ロッテ脇本直人のリスタート。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/11/15 07:00
健大高崎の強打者として甲子園で輝いた姿を覚えている人も多いはず。脇本の野球人生はまだまだ続く……。
「この3年間で精神的にも強くなれたと思います」
それでも、9月19日にジャイアンツ球場で行われたイースタン・リーグ(対巨人戦)では今季第1号を放つなど2安打1打点。戦力外通告を受ける直前に行われた社会人日本代表との練習試合でも、この秋、阪神にドラフト5位で指名された九州三菱自動車の谷川昌希からレフト前にヒットを放つなど、リーグ終盤戦に来て、これまでとはどこか違う成長の跡も窺わせた。
「大塚さん(当時二軍外野守備・走塁コーチ)からも『自分をしっかり持って、腐らずにやれ』といつも勇気づけてもらいました。『この世界は周りを蹴落としてでも自分がのし上がっていくところだから、真面目にやっているだけじゃ、すぐクビになるぞ』と結構厳しめの言葉をいただくこともありましたし、この3年間で精神的にも強くなれたと思います」
人に優しく、自分に厳しく。
戦力外通告を受け、厳しい立場に置かれた今もなお、そうした姿勢に変わりはない。それもまたプロで過ごしたこの3年間での精神的成長が大きく影響しているのかもしれない。
すでに社会人チームから誘いは来ているが……。
現在、脇本の元にはかつての指導者を通じ、社会人チームからいくつかの誘いが来ている。
プロの道を諦め社会人野球を経て、また別の野球人としての生活を送るのも一興、いっそ野球を諦め、別の道に進んでそこで一旗を揚げるのも一興。そうした幾つかの選択肢も彼の頭には存在している。
今月15日に行われる運命のトライアウトを前に、彼はこんなことも言っていた。
「周りの目を気にせず、自分の全力を見せたいと思っています。
子供の頃って打ちたい、打ちたいと思って打席に立つじゃないですか。でも、今回は結果を出そうとか、そういう欲も出さずに、野球本来の在り方というかそういうものを意識しながらやって来ようかなって……」
プロ3年目21歳の若者とは思えない覚悟を、そこに見た想いがした。