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J1強化担当が続々と水戸に集結!
前田大然は独特すぎる韋駄天FW。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/27 07:00
前田を見ると、外見とともに圧倒的なスピードに目を奪われる。今季の活躍ぶりでいわゆる“個人昇格”を果たす可能性もある。
「スピードは裏切らない」と推薦したスカウトの回想。
「高卒でプロになることしか考えていなかった」
本人の覚悟はプロ関係者にも通じたようだ。「スピードは裏切らないから」と松本のクラブ首脳陣に前田を推薦した江原俊行スカウトは、当時をしみじみと回想する。
「プロ志望の強さは感じた。高校生がプロの練習に初めて来ると、あたふたするんだけど、あいつは物怖じしていなかった。度胸があったね。あのメンタルは、普通の選手とは違ったかな。ただ速いだけではなくて、体の強さもあった。ボディバランスが良いので、簡単に転ばないしね」
ボール扱いなどが不得手で荒削りな面もあったが、伸びしろを買っての獲得。高卒1年目から即戦力とは考えられていなかった。昨季は下積み期間と見なされていたこともあり、チャンスにほとんど恵まれず、リーグ戦9試合で出場時間はわずか54分のみ。絶対的な武器に自信を持つ若武者は、我慢できなかった。「とにかく試合に出たい」とぎらぎらした目で水戸へレンタル移籍。すると、一気にブレイクする。
2節のツエーゲン金沢戦でプロ初ゴールを挙げると、コンスタントにネットを揺らし続け、38節時点で13ゴールをマークしている。
試合に出れば点を取る自信はずっと持っていた。
「試合に出場すれば、点を取る自信はずっと持っていた」
本人は当然とばかりに淡々と振り返るが、松本の江原スカウトは想定以上のゴールラッシュに驚いていた。
「あの速さがあるから使い続ければ、チャンスメークなどでは貢献するとは思っていたが、2ケタまで取るとは……。技術面などはまだまだだけど、試合を重ねるごとに成長している」
走力自慢のFWらしくカウンターアタックから相手最終ラインの裏へ飛び出す形は十八番。シーズン半ばからは相手DFに裏のスペースを消され、スピードを警戒される試合も多くなっているが、得点のペースはそれほど落ちていない。