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直近は小久保、イチローも達成?
激レアなランニング満塁ホームラン。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News

posted2017/09/28 16:30

直近は小久保、イチローも達成?激レアなランニング満塁ホームラン。<Number Web> photograph by Kyodo News

NPBで直近のランニング満塁ホームランは小久保が'99年にマークしたもの。つまり、21世紀に入ってからは1度もないレア記録なのだ。

80年を超すNPBでも7回しかないレア記録。

 解説の鶴岡一人は「二宮の守備がいかん」みたいなことを言ったが、鶴岡御大も事態が良くわからなかったのかもしれない。なお試合は7-2で中日が勝利した。

 その夜の「プロ野球ニュース」の冒頭で、MCの佐々木信也が「いやー、今日は名古屋ですごいプレーがありましたよ」と言うのを聞いて、初めて凄いものを見たという実感がわいてきた。

 デービス本人も最初はクールで、記者に囲まれて「ランニング本塁打はメジャーでは10本くらい打っている。コメントはすべて監督からきいてくれ」といって風呂場に向かったが、しばらくして戻ってきて、記者団に滔々と話し始めたという。彼もそのときになって自分がやったことのすごさを思い知ったのかもしれない。

 80年を超すNPBの歴史で、公式戦でのランニング満塁ホームランは7回しかない。

 1度目は1947年7月3日、西宮球場の阪急vs.巨人戦の7回、阪急の野口明が巨人の二番手・多田文久三から記録したもの。野口は有名な野口4兄弟の長兄で捕手が本業、キャリアで29盗塁の鈍足だった。ただし終戦2年目だけに、当時の新聞をあたっても記録が記されているだけだ。

通算盗塁6個の鈍足捕手が記録したことも。

 2度目は1950年4月11日、甲子園球場の阪神vs.広島戦。広島の阪田清春が阪神の二番手・駒田桂二から打ったもの。こちらも捕手の阪田の通算本塁打はこの年に打った3本だけだが、その1本が大記録になった。盗塁も通算6個の鈍足。甲子園はこの日わずか3000人。これもそれほど注目されなかった。

 3度目は1974年8月28日、仙台宮城球場のロッテvs.南海戦。ダブルヘッダーの2試合目、弘田澄男が記録した。1回表に2点を先制してなおも二死満塁、南海先発の山内新一に代わって上田卓三がマウンドへ。その弘田が放ったライナーの打球はライト門田博光の前に飛んだが、門田が突っ込みすぎて取れず。センターの島野育夫がフェンス際で追いついたときには弘田は二塁を回っていた。

 門田のエラーにあたるプレーだったものの、グラブにかすりもしなかったために本塁打として記録されたのだ。1回に6点を先取された南海は6-6の引き分けにこぎつけたが、野村克也捕手兼任監督は「門田はプロとは言えん」と一喝。なお弘田は163cmの小兵ながらファイトあふれるプレーで鳴らした名外野手だった。

 そして4度目が前述したウィリー・デービスの一打である。

【次ページ】 4度目と5度目は東京ドームの日本ハムvs.西武で。

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