酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
直近は小久保、イチローも達成?
激レアなランニング満塁ホームラン。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2017/09/28 16:30
NPBで直近のランニング満塁ホームランは小久保が'99年にマークしたもの。つまり、21世紀に入ってからは1度もないレア記録なのだ。
4度目と5度目は東京ドームの日本ハムvs.西武で。
5度目は1989年7月1日、東京ドームの日本ハムvs.西武戦の9回、西武の田辺徳雄が日本ハムの4番手・金沢次男から打ったもの。その前の時点で6-1と西武がリードしていたが、ダメ押し点になった。のちに西武監督を務めた田辺だが、当時はチームメイトに冷やかされて「ランニング本塁打は高校時代からやったことがない」と照れたという。
6度目は、1997年4月15日、5度目と同じく東京ドームの日本ハムvs.西武で、これも9回のことだった。3番DH高木大成が、日本ハム二番手・山原和敏の2球目を右中間に運ぶと、ライト上田佳範がもたつく間に帰ってきた。「打った瞬間三塁打は行けると思ったけど……」と高木本人も驚いた。
小久保も「こんなラッキーがあっていいの?」
そして7度目は、破天荒な一打だった。1999年8月20日の福岡ドームでのダイエーvs.日本ハム戦の2回のこと、ダイエーは1点を先制してなお無死満塁、秋山幸二が先発・山原和敏の初球をバックスクリーンに叩き込みグランドスラム。これは普通の満塁本塁打だが、ダイエーはここから走者をためてまた一死満塁、ここで4番小久保裕紀が二番手・今井圭吾の打球を中前にはじき返す。これをセンターの石本努が後逸、小久保も一気に本塁に帰ってきた。
史上2回目の1イニング2満塁本塁打。しかも2本目はランニング満塁ホームラン。
「こんなラッキーがあっていいの?」
試合後、小久保の笑顔がはじけた。
公式戦は以上の7本だが、冒頭で紹介したように1994年2月20日、沖縄・宮古島で行われたこの年のオープン戦第1戦で、横浜と対戦したオリックスの鈴木一朗は、8回に友利結から決勝のランニング満塁ホームランを打つ。8000人と超満員の観客は大興奮だったが、この日のスポーツ紙の見出しは「波留一番」。1回表、横浜のドラフト2位ルーキー波留敏夫が先頭打者ホームラン。こちらの方がインパクトがあったのだ。
なお、イチローはこの時点では「鈴木一朗」。この年の4月7日にイチローと登録名を変更している。