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直近は小久保、イチローも達成?
激レアなランニング満塁ホームラン。

posted2017/09/28 16:30

 
直近は小久保、イチローも達成?激レアなランニング満塁ホームラン。<Number Web> photograph by Kyodo News

NPBで直近のランニング満塁ホームランは小久保が'99年にマークしたもの。つまり、21世紀に入ってからは1度もないレア記録なのだ。

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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 この間、イチローの二軍での46試合連続安打という大記録を取り上げた。このときに1994年2月のオープン戦でイチローがランニング満塁ホームランを打ったことを紹介したが、twitterで「ランニング満塁ホームランって何?」という反応があった。

 そうか、今どきの青少年各位は、ランニング満塁ホームランを知らないか、と一種の感慨を抱いた。そりゃそうだ、ランニング満塁ホームランはかれこれ20年近くも出ていないのだから。今回は、これを取り上げよう。

 1977年5月14日は土曜日だった。NHKで7時のニュースの後、中日vs.巨人のナイター中継があった。

「NHKだから、民放と違って『そろそろこの辺で失礼します』がない」と私は喜んだ。雨天中止の際の番組は『連想ゲーム』だったから、母などはそっちが良かっただろうが。

MLBで実績十分のデービスが中日時代に……。

 この年、中日に入団したウィリー・デービスは、MLB2547安打(のちにMLBに復帰して通算2561安打)、NPBにきた外国人史上、最多安打の実績を引っ提げていた。オールスター出場2度、ゴールドグラブ3度という超大物だったが、すでに37歳。通用するか疑問視する向きもあったが、この試合前まで.302と期待に応えていた。

 2番センターで先発した7回、二死満塁でデービスに打席が回る。投手は西本聖、2ストライクからの3球目を振りぬいた打球は45度の角度で伸びていく。ライトを守っていた二宮至がジャンプしてグラブを差し出したが、その上をかすめて直接フェンスに当たる。デービスはそのときにはすでに二塁近くに到達しており、そこからスピードをぐんぐん上げる。三塁を回るときには勢いでヘルメットが脱げたが、デービスはそのままホームイン。

 ランニング満塁ホームランだ!

 塁間13歩と言われる長いストライドが強烈だった。

 いっしょにテレビを見ていた中日ファンの父も私も、しばらく無言だった。状況がよく呑み込めなかったのだ。

【次ページ】 80年を超すNPBでも7回しかないレア記録。

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