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イチローの来季契約はどうなるか。
マーリンズを買ったジーターの心は?
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2017/09/29 11:00
投手交代の合間にオズーナ(左)、イエリチ(中)と話すイチロー。走攻守で若手選手に刺激を与え続けている。
副GMは「イチローは必要不可欠」と思っているが……。
賛辞は尚も続いた。だが、バーガー副GMの表情が曇った瞬間があった。
「残念なことに我々には現状で決定権はありません。新オーナーシップが我々に意見を求めるようなことがあればもちろん進言します。『イチローは我々にとって必要不可欠な選手です』と。ですが、彼らが我々に意見を求めるのかさえもわからないのです。私の処遇も含めてね」
最後に同副GMは米国人がよくやる人差し指と中指を交差する「クロス・フィンガーズ」のゼスチャーをとりこう言った。
「イチローが来季もマーリンズのためにプレーしてくれることを祈っているよ」
マーリンズは昨今、財政面で大きな問題を抱えている。収支のバランスだ。
今季開幕時の総年俸は約1億1540万ドル(約128億4500万円)。これに対し、年間総収入は7000万ドル(約78億2千万円)に満たないと聞く。赤字は推定で4540万ドル(約50億7000万円)以上になる。
来季の契約がある選手だけで既に年俸は100億円以上。
チームには、既に来季も契約が保証されている選手が8人いる。
スタントン 2500万ドル(約27億9000万円)
プラード 1350万ドル(約15億円)
ボルケス 1300万ドル(約14億5000万)
ゴードン 1050万ドル(約11億7000万円)
チェン 1000万ドル(約11億1000万円)
ジーグラー 900万ドル(約10億円)
イエリチ 700万ドル(約7億8000万円)
田澤 700万ドル(約7億8000万円)
8選手の合計だけで年俸は9500万ドル(約106億1000万円)にも達し、このままでは財政赤字は蓄積される一方だ。
新経営陣が無策で球団を買収したとは思えない。新たな増収、財源も確保しているとは思うが、地元メディアの間では総年俸を削減するのではないかという声が多い。
スタントンをトレードすれば総年俸も削減され、外野のポジションにも空きが生まれる。日本のファンにとっては“いい話”になるのだが、スタントンには28年の球団オプションも含め11年間で3億1000万ドル(約346億2000万円)もの契約がある。トレードも簡単な話ではない。