野球のぼせもんBACK NUMBER
工藤監督「CSもいける」とニヤリ。
武田翔太を復活に導いたのは脱力。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/09/15 11:30
9月6日のオリックス戦では最速147kmの直球と120km台のカーブのコンビネーションで8安打無四球完封の投球を見せた。
上半身の力を限りなくゼロにして、下半身で投げる。
武田はかつて、理想のフォーム像をこのように語っていた。
「僕が目指しているのは“脱力”です。上半身の力を限りなくゼロにして、下半身で投げるのが理想なんです」
それを実現するため、武田は走り込みを重視する。10kmのランニングをシーズン中はもちろん、登板試合後でも欠かさないのだ。
「下半身強化のおかげで、もちろん全身が強くなりました。200kgの重りを担いでスクワットが出来るようになりましたからね。嬉しいですよ。だって、プロ入りした頃は60kgしか持ち上がらなかった。あの当時から体格が特別大きく変わったわけではないのに。筋肉の質が良くなっているんです。筋肉は大きさじゃなくて出力です」
工藤公康監督は頼れる右腕の復調を大いに喜び、「これで十分クライマックスシリーズとかもいける」と声を弾ませた。
この完封翌日にはまた出場選手登録を抹消されたが、9月のソフトバンクは6連戦が一度もない緩やかな日程で先発機会がなかったためだ。いくら復調したとはいえ、今はまだ6番手の立場でしかない。ただ、現在は一軍に帯同したまま調整を続けている。
本当に目指すのはリーグ優勝の先、日本一奪回。
ソフトバンクは9月1日にマジックナンバー「16」を点灯させ、その後も驚異的なペースでVロードを突っ走っている。昨年、11.5差をひっくり返された歴史的V逸のリベンジはもうすぐそこだ。
しかし、本当に目指すのはその先にある、日本一奪回である。
「去年の結果を目の当たりにしている選手は特に悔しい思いをしている」(工藤監督)
武田も「日本一奪回」は開幕前から何度も口にしていた。今年苦しんだ時間を取り戻すことは出来ないが、ファンの心に突きささるような感動を届けたいと強く意気込んでいる。