野球のぼせもんBACK NUMBER
工藤監督「CSもいける」とニヤリ。
武田翔太を復活に導いたのは脱力。
posted2017/09/15 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
男気の続投志願だった。ホークスの武田翔太が、9月6日、ほっともっと神戸でのバファローズ戦で今季初完封勝利を飾った。
7回を終えた時点で球数は107球に達していたが、首脳陣から意思を問われると「あと2回行きます」とまたマウンドに向かった。今季自己最多の132球で最後まで投げ抜いたのだ。
「ここ最近ずっと良くないピッチングで5回持たずの試合が続いていたので、野手や中継ぎの皆さんに迷惑を掛けていた。今日こそは長いイニングを投げるという、強い気持ちで臨んでいました」
これがようやく5勝目だった。一昨年は13勝、昨年は14勝を挙げて、今年は侍ジャパンに選ばれてWBCにも出場した右腕としては、何とも寂しい数字である。
「全然ダメですね……。今年はそういう年なのかな」
夏頃、ボソッと弱音を漏らしたこともあった。
「ボールを離すときに、どうしても引っ掻いてしまう」
「3年やって一人前」と言われるプロ野球界だからこそ、今年は大事な年だった。しかし、WBCから帰ってきた時点で最初の壁にぶち当たった。
右肩に違和感があったのだ。「投げながら良くなるのを待つ」と4月5日に今季初の先発登板をしたが、5回3失点で奪三振0。勝利投手にはなったが、明らかに本調子ではなかった。次戦の12日に黒星を喫すると出場選手登録を抹消されて、離脱は2カ月半に及んだ。
戦列に戻って3試合目、7月22日のマリーンズ戦(ヤフオクドーム)で6回1安打8奪三振の無失点ピッチングを見せて今季2勝目を飾った。続く登板でも白星を挙げたが、6回途中で降板。以降も5回ないしは6回途中での交代が続いた。
武田の最大の悩みはストレートにあった。
「ボールを離すときに、どうしても引っ掻いてしまうんです。僕としては上からパーンと叩くのが理想なんですけど」
直球がカットボールのようになるのは武田の持ち球で指にかかっている証拠でもあるのだが、その度合いが過ぎていた。フォームにも悩んだ。もともとは投手プレートの三塁側に立つが、一塁側に変えた試合もあった。「これでしっくりくると思います」と話していたにも関わらず、すぐにまた三塁側へ戻すなど迷走ぶりは明らかに見てとれた。