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新星アセンシオのレアル入団秘話。
スカウト役は、あのナダルだった!?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2017/09/02 08:00
リーガ第2節バレンシア戦でも2得点。アセンシオは看板の「BBCトリオ」に割って入る存在に飛躍した。
ナダルがペレス会長に「よそに獲られちゃダメ」。
マジョルカ島出身のテニスプレイヤーであり、熱心なマドリディスタでもあるラファエル・ナダルに「よそに獲られちゃダメ」と進言されたペレス会長の指示により、相手側の要望を全てのむ勢いで交渉を進め、'14年12月5日、同クラブには珍しい世界的にほぼ無名の若者との契約を発表したのだ。
逆にこの日、アセンシオの名は世界に広く知れ渡った。
さて、このニュースを耳にして慌てたのがバルサのバルトメウ会長だ。直ちに代理人に電話をかけ、「バルサに入ることを承諾してくれたよな?」と、確認とも文句ともつかないひと言を発したところ、代理人はこう答えたという。
「ええ、随分前に。でも、その後あなたたちは何もしなかったじゃないですか」
マジョルカ島のラジオ局IB3が明らかにした、アセンシオのマドリー入りの舞台裏である。
2014-'15シーズンをRCDマジョルカで終えたアセンシオは、その後行われたU-19欧州選手権の優勝とMVPを手土産に、マドリー入団を果たした。
昨季の武者修行では国内外27ものクラブが手を挙げた。
プレシーズンの後、彼の成長を止めたくない当時のベニテス監督が他チームへの期限付き移籍を決めると、国内外の27ものクラブが手を挙げたと代理人は語っている。
「フィオレンティーナやレバークーゼン、ポルト、マルセイユ、リヨンの他、プレミアの複数のクラブがローンを、そしてバイエルン・ミュンヘンを除く欧州中のビッグクラブが買い取りを望んでいました」
財布のひもを締めすぎたバルサやアトレティコ、バレンシア、それに千載一遇の好機を無駄にしたアスレティックは歯噛みして悔しがったことだろう。
結局、年間30試合以上(1試合45分間以上)の出場を約束したエスパニョールへ移ったアセンシオは、そこでボールを持たないときの動きやチームをより意識したプレイなどを学び、マドリーに戻った。
その後のパフォーマンスは急角度で右肩上がり。マドリーがバルサに完勝した8月のスペインスーパーカップでは、現在の両クラブの差を象徴する存在として絶賛されているのだ。