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新星アセンシオのレアル入団秘話。
スカウト役は、あのナダルだった!?
posted2017/09/02 08:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
「一文惜しみの百知らず」を地で行く話をしよう。
13年ほど前のある土曜日の午後、マジョルカ島最大の都市パルマ・デ・マジョルカから15kmほど離れたノバマジョルカの小クラブ、プラジャス・デ・カルビアの試合を観に行ったクレメンテ・マリーンは、とんでもないものを目にした。
「あの歳であんなことをする子、それまで見たことがなかった。毎年何百人もチェックしてきたのに。道ばたで友達とするサッカーで育てられた典型的なタイプだった。9歳に満たないのに、15歳の子供たちと一緒にプレイして、誰にもボールを取られないんだ」
勤続25年(当時)のベテランスカウトを驚かせた少年は、やがて彼の導きによって島のビッグクラブ、RCDマジョルカに入団。年齢的に本来入るべきカテゴリーのチームがなかったため、早速2歳上の子どもたちに混じることを強いられたが、ファンバステンに憧れたオランダ生まれの母親によってマルコと名付けられた少年は、そこでも物怖じすることなくプレイし、着実に成長していった。
「最初の1分で『こいつはモノが違う』と思った」
レバンテやテネリフェを率いて1部リーグを戦ったこともあるホセ・ルイス・オルトラが、2013年夏、RCDマジョルカ(2部)の監督に就いたときのことだ。
「初日にマルコの話を聞かされたよ。ユース1年目の歳なのに、もうBチーム(当時3部)にいるんだって。で、プレシーズンの試合を観に行ったところ、最初の1分で『こいつはモノが違う』と思った。だからトップチームの練習に参加させたんだ」
おそらくこの直後だろう。AS紙によると、バスク自治州出身の父ジルベルトの希望もあって、代理人がアスレティック・ビルバオに売り込んだことがあるという。
しかしスポーツディレクターの返答は、「入団要件を満たさないので興味なし」。
カンテラの関係者が少年の資質をちゃんと確認していたら、あるいは最終的な決定権を持つ会長まで話を上げていたら、今季絶対注目のタレントは今ごろ赤白の縦縞ユニフォームを着ていたかもしれない。