マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
広陵・中村奨成の本質は守備にある。
配球からまめさまで、肩以外も凄い。
posted2017/08/23 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
捕手・中村奨成が夏の甲子園記録更新の「大会6本目」の本塁打を放って、広島・広陵高が2007年以来の決勝進出を果たした。
決勝に勝ち進んだのは広陵高であって、中村奨成が勝ち進んだわけではないのに、大きな話題になっているのは、中村奨成個人ばかりなのが面白い。
彼が入学してからの3年間、たまたまチームが全国の舞台に出場していなかったから話題になるのが遅すぎただけで、もともとずば抜けた能力を持った選手だった。
この夏の甲子園が始まる前、NHKラジオの番組で大会のお話をさせていただいた時、「注目の選手は?」という問いに、即答で「広陵高・中村奨成捕手!」と答えたが、居合わせた人たちで、彼の名を知っている人はいなかった。
それでも、内心、「今に見ていてごらんなさい……」と自信満々だったものだ。
昨年の秋、ある雑誌の取材で、広陵高のグラウンドに中村奨成捕手を訪ねたことがある。
来年(2017年)のドラフトの目玉になる選手を先取りしてほしい。但し、あまり知られていない選手で。
取材の趣旨にピッタリだと、この時も即答で彼に決めた。
中井監督「奨成、どうですか? いいでしょ?」
グラウンドで間近に、「中村奨成」のハイレベルな走・攻・守を感じていると、中井哲之監督がさかんに訊いてくる。
「奨成、どうですか? いいでしょ? 全国レベルの中でも、かなりよくないですか?」
練習試合も限られた地域の学校としかしていないので、全国レベルでどのあたりにいるのかわからないとおっしゃる。わからないが、どう考えてもこんな走攻守の揃った捕手、ほかにいるわけがない……。
そんな中井監督のモヤモヤに、「もちろん、かなりいいです。間違いなく、高校ナンバーワンかナンバーツー……どっちかです」とはっきりとお答えした。
ナンバーワンです! と確答できなかったのは、熊本・九州学院に村上宗隆というパワーヒッターの大型捕手がいたからだ。中村奨成とはタイプが異なるが、昨秋の時点では、こちらのほうも甲乙つけがたい存在と考えていた。