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甲子園の写真は、撮れなかった。
花咲徳栄・岩井監督の優勝方法。

posted2017/08/23 19:30

 
甲子園の写真は、撮れなかった。花咲徳栄・岩井監督の優勝方法。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

花咲徳栄は岩井監督が就任した2001年の夏に甲子園に初出場して以来、強豪として存在感を増してきた。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

 試合前、花咲徳栄を率いる監督の岩井隆は初めての決勝の舞台で大勢の報道陣に囲まれても、じつに堂々としていた。

「これまで日本一を掲げてやってきたので、こういう舞台は想像していました。なので、この雰囲気も。やっぱりこうなったか、と。私がブレると、子どもたちもブレてしまうと思うので」

 言うことも、まるで何度も優勝経験のあるベテラン監督のようだった。

「思い切ってやれと言いたいところですけど、したたかに自分たちの野球をやりたい。思い切りと自由を間違えて失敗したこともあるので。ただギリギリまで我慢させて、最後の直線では手綱を離す。そうすると、一気に走るので」

 試合が始まると、やはり今大会、花咲徳栄の打線が抜けていたことを思い知らされる。どの打者も低めの変化球には手を出さず、甘いところにきたボールを1球で仕留めた。

「ひと振りで決める」は、花咲徳栄の合言葉でもあった。

優勝校に2度負けて気づいた、破壊力の重要さ。

 岩井が説明する。

「うちは3球打撃とか、1球打撃をよくやる。練習ではファウルを打つと、怒りますよ。なんで来るボールがわかってて、芯でとらえられないんだ、って。バッティング練習でよく最初にバントをするじゃないですか。あれも、うちは最後。バントで目を慣らさなくても、最初の一振りで合わせられる習慣をつけるためです」

 これは、以前から続けていたことだ。ただ一昨年は東海大相模に、去年は作新学院にと、優勝チームに敗れ、それだけでは勝てないと痛感したという。

「どちらのチームにも150キロのボールを投げるピッチャーがいて、つないでつないでという細かい野球にこだわってやってきたんですけど、破壊力がないと通用しないと思った。だから去年の秋からは、少々荒くなってもいいから、とにかくフルスイングしろと言い続けてきた」

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