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バルサを出る理由は、お金とメッシ。
ネイマール移籍騒動の裏側を解説。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2017/08/02 12:00
ピッチ上ではメッシと最高の関係を築いていたネイマールだが、外ではそうではなかったのだろうか……。
クライフが予言していたメッシとの共存不可能性。
もうひとつは、チームの絶対的エースになることだ。
史上最高の選手ともいわれるメッシが君臨するバルサでは、どれほど活躍したところでナンバーワンにはなれない。2010年のイニエスタやシャビのように、バロンドール賞には手が届かない。
振り返ると、バルサのネイマール獲得が決まったとき、故ヨハン・クライフは「鶏小屋ひとつに雄鳥二羽は収まらない」と警告を発した。時が流れ、ピッチの上でメッシとネイマールの連係が機能するに従い、これを冷笑する人は増えていったが、天才が予見していたのは現在のこうした事態なのだ。
290億円の違約金をPSGが「払う」と決断。
ネイマール流出の危機を前に、バルサは自ら築いた高い防御壁を信じていた。
7月1日を境に2億ユーロから2億2200万ユーロ(約290億円)に跳ね上がった違約金のことである。たった1人の獲得にこれだけ払うのは馬鹿げているし、赤字に繋がる過剰な支出は、UEFAのファイナンシャルフェアプレイ(FFP)規定で抑制されている。
それでもPSGは「払う」という決断を下し、FFPというハードルを飛び越えるべく知恵を絞ってきた。たとえばPSGのケライフィ会長が持つカタール・スポーツ・インベストメント社にネイマールを2022年W杯のイメージキャラクターとして採用させ、3億ユーロ(約390億円)の報酬を払わせ、ネイマールに違約金を負担してもらうというシナリオだ。
フランスのBFTVがFFPクリアの条件に挙げたように、2018年1月30日までに複数の選手を売り、1億110万ユーロ(約143億円)作る覚悟だってあるのだろう。ベッラッティをバルサに譲り、ネイマールの“移籍金”の額を交渉するという奥の手さえ用意しているかもしれない。