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ワールドシリーズ制覇か定位置か。
青木宣親、電撃移籍の背景と葛藤。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/08/02 11:30
日米2000本安打を達成した節目のシーズンに訪れた転機。青木はまずレギュラーを獲得し、トロントの地で立ち位置を確立するほかない。
OPS9割超が2人、8割超が3人という豪華陣容では……。
現在、スプリンガーはケガで戦列を離れ、ゴンザレスはショートのコレアのケガによって内野に回っているが、それでもなお、レディック、マリスニックのOPSは.800を超え、コールアップされた若手のフィッシャーもサンプルは少ないものの、.800を超えている。また、指名打者で出場することが多いベルトランも、場合によっては外野を守れる。
単年でこれだけの成績の選手を揃えるのは、並大抵のことではない。
それに比べ、青木はこれまでに比べて出塁率は下がり気味ではあるが、7月は長打も出るようになり、数字が向上してきた。これまでのパターンから、8月、9月に打撃が上向くことが多く上積みが期待できるのだが、アストロズでは力を見せる機会は限られそうだった。
青木のトレード相手は先発ローテ4番手クラス。
7月下旬、ダルビッシュをはじめとしてトレードの噂が乱れ飛ぶ中、アストロズもエースのダラス・カイクルが故障に苦しんでおり、ワールドシリーズ優勝のためには先発陣の補強が予想されていた。
そうなると、外野陣から誰かがトレードされる可能性がある。ダルビッシュ級の「ブロックバスター・トレード」を実現させるとなると、フィッシャーやマイナーの有望株の名前が浮上してきそうだったが、同地区でこれほどのトレードが実現するとは考えにくいと私は読んだ。
そうなると、他球団の中堅クラスの先発を物色することになる。となれば、出番の少ない青木がトレードに出される可能性はゼロではなかった。
リリアーノは今季、18試合に先発して6勝5敗。ローテーションの中では、4番手クラスの扱いだ。しかし、ポストシーズンでの経験もあり、大きなトレードではないにせよ、今回の取引は「実のあるトレード」といえるだろう。