イチ流に触れてBACK NUMBER
好調のイチローが毎日続ける作業。
準備とは言い訳の材料を作らない事。
posted2017/08/01 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Kyodo News
数字がようやくイチローらしさを表すようになってきた。
30日時点、7月の月間成績は27打数9安打、打率.333。球宴休み前にイチローにその事実をぶつけると、彼は苦笑しながらも当然と言った表情を見せた。
「そりゃ、機会があれば、どうにだってしますよ。オールスター直前ですから……。それを言っちゃね、なかなかいいづらい(笑)」
7月もここまで21試合に出場しているが、先発出場はわずかに5試合しかない。相変わらずの不遇起用に変わりはない。それでもスタメン出場を果たした6日のカージナルス戦では3打数2安打、1四球。しっかりと責務を果たす43歳の仕事人に、マーリンズのドン・マッティングリー監督は同じ言葉をいつも繰り返す。
「彼はいつでもしっかりと準備をしてくれている。どんな時でも彼を起用することにためらいを感じたことはない」
球場にくると、イチローはまずスタメンを確認する。
イチローは毎日、球場に来てからスターティングメンバーが書かれたラインナップシートに目を通す。現状で、そこに自分の名はいつもない。それでもスタメンの有無に関わらず、彼は寸分変わらぬ準備をそこからはじめる。
本拠地であれば、まずは初動負荷理論の特殊マシーン9台を使い、体の柔軟性を呼び起こす。その後は室内での打撃練習。みっちりと振り込み、クラブハウスに戻るころにはエアコンディショニングが効いたドーム球場でありながら、滝のような汗を流している。そして、この後がフィールドでの全体練習になる。
他のナインがおしゃべりをしている間にひとりウォームアップを始め、ストレッチに取り組む時間と集中力は、誰よりも長く、入念だ。キャッチボールが始まれば、20代半ばの選手が多いマーリンズにあって、遠投の距離は最長、軽快な動きは20代の頃と何ら変わりない。