“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
前橋育英が青森山田に半年越し雪辱。
選手権の5点差はどう埋まったのか?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/01 12:00
CB角田涼太朗は守備に奔走したうえで、ゴールまで決めた。しかし彼らの目標は優勝、まだ兜の緒を緩めるわけにはいかない。
決戦の朝、選手権決勝の映像をあえて見直す。
「3回戦が1つの山。もちろん目標は日本一ですが、3回戦で青森山田を叩いての日本一じゃないと意味が無い」(田部井涼)
この時から、全員の目の色が変わった。そしてインターハイが開幕すると、初戦の三重戦で7-0の大勝を飾り、2回戦の東海大相模戦では先行されるも、後半だけで3点を挙げて試合をひっくり返した。その頃、1回戦シードの青森山田は別会場で大会初戦の東福岡戦を迎えていた。
「3回戦で青森山田と戦うことが目的で、ここにやってきたと言っても過言では無い。昨日のゲームも申し訳ないけど、『青森山田よ、勝て!』とみんなで言っていた」(山田監督)
その願いが届いたのか、青森山田は東福岡を3-1で下し、3回戦に駒を進めて来た。
ついに実現したリベンジマッチ。決戦の朝、山田監督は選手達に選手権決勝のビデオを見せた。しかも試合のシーンではなく、試合後の表彰式のシーンだった。
「青森山田が優勝カップを掲げるシーンをピッチから眺めているシーンがフラッシュバックをしてきた。スイッチが入りました」(田部井涼)
「あの悔しさが鮮明によみがえってきた。もうあんな想いはしたくない、勝ちたいと心から思えた」(田部井悠)
先制点を奪われても、2点は与えない。
モチベーションを最高潮に高め、臨んだ決戦の時。だが、青森山田がいきなり牙をむいた。開始早々の5分、GKからのロングキックをMF郷家友太にヘッドでそらされ、MF田中凌汰に中央を突破されて、青森山田に先制ゴールを許す。試合はそこから、勢いに乗った青森山田ペースとなった。
しかし、前橋育英はある決意を共有していた。それが「選手権決勝の教訓」だった。
「決勝ではそこからあっさりと追加点を獲られてしまった。追加点を奪われるとキツいと言うのは分かっていたので、もう一回締め直して、気持ちを入れた」(松田)
「先制点を奪われたことはもう仕方の無いこと。でも、2失点目は絶対にない。選手権のようなことになってはいけない」(渡邊)
チームで改めてその想いを共有し、DF陣がゴール前の最後の場面で身体を張る。前半30分まで続いた青森山田の時間をしのぎ、決定機を作らせなかった。