“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
前橋育英が青森山田に半年越し雪辱。
選手権の5点差はどう埋まったのか?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/01 12:00
CB角田涼太朗は守備に奔走したうえで、ゴールまで決めた。しかし彼らの目標は優勝、まだ兜の緒を緩めるわけにはいかない。
待ちに待ったセットプレー一発で同点に。
「しのげばどこかでチャンスは必ず来る。特にセットプレーは自信があるので、セットプレーに持ち込んで点を獲るチャンスを作り出す狙いだった」と渡邊が語ったように、我慢を続けた結果、その時はやってきた。
31分、田部井悠の左CKをファーサイドで渡邊が高い打点のヘッドで折り返す。これを角田が冷静にボレーで蹴り込んで、同点に追いついたのだ。
直後の35分には、青森山田に左サイドを崩されて決定的なチャンスを作られるが、ゴール前でボールをフリーで受けたMF壇崎竜孔のシュートを、「ここで決められたら、また決勝と同じ展開になると思った。冷静にコースを切って反応した」と、GK湯沢拓也がビッグセーブで防ぎ、1-1の同点で前半を折り返した。
迎えたハーフタイム。山田監督は1-1で引き上げて来た選手達に、冷静かつ熱烈な言葉を送った。攻守において具体的な指示を出した後、選手達に向かってこう言い放った。
「今の相手がどんな相手かは、みんなが一番分かっているよな。勝たなきゃいけない相手。あと35分(インターハイのハーフの試合時間)だぞ、次の試合のことは考えなくていいからやりきれ!」
選手とともに屈辱と悔しさを味わった指揮官の言葉は、魂となって選手に乗り移った。
後半から一気に攻め手を強め、3-1で勝利。
後半開始のホイッスルと同時に攻撃のスイッチを入れた前橋育英が猛攻を仕掛ける。後半早々の37分には左CKから逆転ゴールを挙げ、さらに攻め手を強める。
渡邊が左サイドを制圧し、田部井涼と塩澤隼人のダブルボランチがテンポ良くボールを配球。2年生FW榎本樹と、ハーフタイムに投入された飯島が果敢に裏を狙って、青森山田ゴールに迫った。
60分には左サイドをドリブル突破した渡邊の折り返しをニアで榎本が蹴り込み、試合を決定付ける3点目。後方では昨年のレギュラーが全員残った4バックが最後まで堅い守りを見せ、青森山田の反撃を許さなかった。
3-1のまま試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、前橋育英の選手達は喜びを爆発させた。
冬のリベンジを、夏の宮城で成就させた前橋育英。試合後、リベンジ達成の喜びに溢れているかと思いきや、選手たちは冷静だった。冒頭の「この勝利のために半年間やってきた」という角田の言葉はこんな風に続くのだ。