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プレミア屈指の名審判がサウジへ。
高年収の代わりに失ったW杯決勝の笛。 

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パトリック・ソウデン

パトリック・ソウデンPatrick Sowden

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photograph byPierre Lahalle

posted2017/07/26 11:00

プレミア屈指の名審判がサウジへ。高年収の代わりに失ったW杯決勝の笛。<Number Web> photograph by Pierre Lahalle

プレミアリーグ最高の審判として評価がある一方、ピッチ上での彼の振る舞いを非難する人もいる……。

サウジ行きで年収は一気に4倍になった!

 4月29日のウェストブロムウィッチ対レスター戦が、クラッテンバーグにとってプレミアリーグ最後の試合となった。同リーグで主審を292試合務めた実績を残し、クラッテンバーグはサウジアラビアでのレフリー養成という新たな使命のために、中東へと旅立ったのだった。

 ちなみにクラッテンバーグの前任者として、サウジでその仕事にあたっていたのは同じイングランド人のハワード・ウェッブ。今はアメリカ合衆国で同様の職務に就いている。

 契約条件は申し分ない。イギリスのメディアによれば、42歳のクラッテンバーグが受け取る年俸は税抜きで50万ポンド(約7200万円)以上という。

 イングランドで彼が得ていた額の4倍である。

「彼ならばロシアW杯にも行けたのだが……」

 クラッテンバーグの決断自体は驚くに当たらない。

 昨年末にドバイで行われた世界最優秀レフリーの表彰式で、彼は自らの意志をハッキリと表明している。だが行き先は、中国スーパーリーグになるだろうというのが大方の予想だった。

「具体的なオファーはまだ何もないが、来た場合には真剣に考慮する。プレミアリーグとの契約は残っているが、長いスパンで自分のキャリアを考えたい」と、そのときに語ったのだった。

 サウジ行きの先輩であるウェッブが事情を説明する。

「私がサウジを離れてアメリカに行くと知ったとき、マークは私にサウジでのチャレンジに魅力を感じていると気持ちを打ち明けた」

 決断への批判はないが、タイミングに関してウェッブは懐疑的である。

「彼ならば次のロシアワールドカップにも行けたのに、その機会は失われてしまった。恐らく彼は、レフリーとしてこれ以上はない充実したときを過ごして、別のことをやってみたくなったのだろう」

【次ページ】 1年間で、FA杯、CL、EUROの各決勝で笛を吹いた。

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