野球善哉BACK NUMBER
15人全員使う、全打席フルスイング。
弱くても奇想天外な高校は魅力的だ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/07/20 17:00
大らかに最後の夏を楽しむ“普通の高校球児”も目にできる。地方大会の良さは、そこにあるかもしれない。
「基本的には80球くらいが限度かなと考えています」
チームを率いる古谷健監督の言葉である。
「基本的には80球くらいが限度かなと考えています。選手はそれを分かっているので、毎試合準備していますね。投手だけじゃなくて、野手も、毎試合出番の準備をしています。僕の目標は選手全員を試合に出すことです」
実際、どのような采配だったか。試合を振り返る。
成田国際は2回、2点を先制して合を優位に進める。すると6回表のことだった。ノーアウトから6番・鈴木駿介が安打で出塁すると、先発した柳沢光俊に代打を送った。そして代打の上田晃太郎は自らの役割を果たすべく、送りバントを決めた。
後続が倒れたために追加点はならなかったが、思い切った采配だ。なぜかと言うと、柳沢の球数は60球弱だった。それでも指揮官は追加点が欲しいことと総合的に判断しての選手交代だったのだという。
投手に代打を送ったため、6回裏に投手は交代した。2番手の高貫塁唯は低めを丹念についたが、失策からピンチを招いて1点を献上。2死までこぎつけたが、4番にヒットを打たれたところで、エースナンバーの石川純乃介がマウンドに登った。その石川は後続を打ち取り、同点となる危機をしのいだ。
僅差のリードの局面で、次々と代打を送り込む。
7回に1点を追加した成田国際は、続く8回表の攻撃でも次々と選手を送り出した。
1死一、三塁の好機を作るとここで代打・滝沢知也を送る。滝沢の役割はスクイズだった。しかしこれが失敗に終わり、三塁走者がつり出され2死二塁となった。すると3ボール2ストライクのタイミングで、打撃を期待する代打として稲毛広平が起用された。
結果的には得点に繋がらなかったが、場面によって選手を使い分ける。まさにベンチメンバー全員を駆使して戦い、最終的に3-1で勝利した。