ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
名波監督が築く鉄壁のジュビロ。
モデルは'98年W杯フランスにあり!
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/19 11:30
現役時代以上に研ぎ澄まされた戦術眼。指揮を執って4年目の名波監督が、磐田というクラブの潜在能力を引き出している。
俊輔、川又、アダイウトンの前線も“黒子”の役割。
最終ラインの押し上げを地味に支えるアタック陣の働きも見逃せない。危険な「裏一発」や縦パスに制限をかけるフィルター役として機能。3人の担当するゾーンも中村俊輔が右、川又堅碁が中央、アダイウトンが左で落ち着いた。深追いを自重しつつ、下がり過ぎない。中村の的確な指示がバランスの維持に一役買っている。もう一つの選択肢である「2トップ+トップ下」はオプションへ。選手側の意見(1トップ2シャドーを支持)を尊重した指揮官の決断がうまく転がった格好だ。
ここにきて攻撃のアイディアをめぐるイメージの共有が進み、攻と守がコインの裏表のような関係へ発展しつつある。量産態勢に近い川又、アダイウトンの覚醒もこうした文脈の中にある。右へ回った中村が巧みに時間をつくり、川辺駿(ボランチ)や櫻内渚(右ウイングバック)らの推進力を加速させる好循環。これらの要素を丸ごと「上乗せ」できるのも、おいそれとは崩れぬベースがあるからだ。良い攻撃は、良い守備から生まれる――その道筋が見えてきたと言ってもいい。
5連勝を飾った甲府戦はウノ・ゼロ(1-0)だった。前半に先制パンチを食らわせ、後半は速攻狙いの相手をわざと自陣に引き込み、スペースを取り上げて、まんまと逃げ切った。このカルチョ風リアリズムもディフェンス力への絶対の自信から生まれたものだ。オフェンス面の「余白」を残した状況での快進撃だけに、後半戦の展望も明るい。どこまで余白をぬりつぶし、総合力をアップデートできるか。いつでも立ち戻れる不落の城を築いたからこそ、大胆なチャレンジができるはずだ。