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3度の大ケガ、リハビリ、引退危機。
FC東京・米本拓司、絶望からの帰還。
posted2017/07/18 08:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
倒れたら、起き上がる。
プレースタイルも、そしてサッカー人生も。それがFC東京の背番号「7」を背負う米本拓司である。
7月8日、味の素スタジアムで行なわれたFC東京vs.鹿島アントラーズ戦。首位に躍り出たディフェンディングチャンピオンを、3連敗中のホームチームがどう迎え撃つか。4万3000もの観衆が集まったこの一戦には、注目すべきトピックがあった。
約1年ぶりとなる米本のリーグ戦先発――。過去に2度、左ひざ前十字じん帯を損傷する大ケガに見舞われた彼は、昨年7月の川崎フロンターレ戦で右ひざ前十字じん帯断裂及び内側側副じん帯損傷によって三たび長期離脱に追い込まれた。
今年4月のJ3リーグ戦で復帰し、YBCルヴァンカップで先発フル出場を果たすなど徐々に調子を上げてきたなかで、「連敗ストッパー」として白羽の矢が立ったのだ。
「サッカーをやめる」選択肢もちらついた3度目のケガ。
誰よりも走り、ボールを奪い、縦パスのチャンスをうかがう。闘い、前に出る。個で発信する推進力がいつしか全体の推進力となっていった。王者に追いつかれての2-2ドローに、試合後の米本は悔しそうな表情を浮かべた。
「(連敗中に)出番が自分に回ってきたというのは、自分にとってチャンス。勝てばそのチャンスをつかめると思って、そういうふうに臨んだ試合だったので。勝てなかったのは残念ですね」
一方でチームのターニングポイントになる手応えを感じ取っていたのも確かだった。
昨年8月、米本はスペイン・バルセロナにいた。
3度目のケガは、再び絶望から始まった。「サッカーをやめるみたいな感じも(自分のなかに)あった」と引退を考えたほどだった。