“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
鳥栖からブンデス入りの鎌田大地。
「わがまま」だった高校時代は……。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/16 08:00
20歳での海外移籍というと、21歳でドルトムントへ移籍した香川真司よりも早い。期待度の高さが感じられる。
ボールを受けると、時間が一瞬止まる!?
関西の関係者から、「あのでかくて、速くて強くて、しかも異常に上手い14番は一体何者なんだ!?」と驚愕されるほど、彼のプレーは群を抜いていた。
プリンスリーグ関西では全18試合に出場して22ゴールを叩き出し、チームを高円宮杯プレミアリーグ参入戦に出場できる3位に押し上げた。その勢いのままゴールを奪い続け、チームをプレミアリーグへと導いたのだった。
彼のプレーの最大の魅力は、独特の“間”にある。
ボールを受ける時に背筋がピンと伸びているため、180cmの身長がさらに大きく見える。バイタルエリアやペナルティーボックス内でも同じで、余裕を持ってボールを受けるため、DF陣はむやみに飛び込むことが出来ない。
まず卓越した足下の技術を存分に生かし、ファーストタッチで最適な場所にボールを正確に置く。さらに上体を起こして視野をしっかり確保し、シュートなのかラストパスなのかの選択をギリギリまで使い分ける。そのため見ている者は、まるで時間が止まったような感覚を受けるのだ。
会話にも、鎌田には独特のリズムがある。
そして独特の“間”は、彼の性格にも当てはまる。彼を取材する時、会話に独特のリズムがあるのだ。
こちらが質問を投げかけると、少し考えてからゆっくりと話しだす。その繰り返しだ。高校生の選手だと、質問に対して気を使って早く答えようとしたり、回答がすぐに出てこないという初々しい場面がよくあるが、鎌田はむしろ大人以上に、落ち着いてじっくりと回答をする珍しいタイプだった。
印象的だったのは、彼が高3に上がる直前の春のフェスティバルで話をしたときのこと。
「プレミアリーグに上がることが出来たのは、先輩達の力のおかげ。僕らの力で上がって来たわけではないんです」
謙虚な物言いからスタートしたが、徐々に話が自分のことになってくると、彼の強い意志が顔を出した。
「もっと点にこだわるプレーヤーになりたいんです。去年はまだ感覚でプレーをすることが多かったのですが、今年はもっと相手を観察して、より相手の意図を外してシュートが打てる選手になりたい。そうしないと怖くない」