炎の一筆入魂BACK NUMBER
専門学校卒の星・一岡竜司。
広島で輝く、庶民派のド根性右腕。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/07/13 17:00
今季はすでに29試合に登板しており、安定的にチームを支えている。広島の連覇には一岡の活躍は必須条件である!
日常生活では右手を大事にして、とにかく使わない。
今季も「右内転筋筋挫傷」で出遅れたが、4月20日に一軍昇格。徐々に首脳陣の信頼を勝ち取り、今ではリードした6回や7回、同点の場面やビハインドでも投げるというように、登板状況を問わず起用される「便利屋」を担う。
「いろんなところで投げさせてもらって成長できている。たくさん投げさせてもらうことで体は強くなるし、(ケガへの)免疫もつきますしね」
ブルペン陣を下支えする目立たぬ役割にやりがいを感じている。
今もまだ「浅指屈筋損傷」の再発の危険性とは常に背中合わせだ。ユニホームを着ているときだけではない。日常生活では極力、右手を使わないように心掛けている。蛇口をひねるのも、ペットボトルのふたを開けるのも、利き手ではない左手を使う。
苦境に立たされても「左も右と変わらないくらい器用に使えるようになりましたよ」と笑い飛ばす強さがある。
新球“パーム”を、いきなり巨人の4番に投げ込んだ。
どんなときでも明るく前を向き、乗り越えてきた。
「何度もケガをしてきたからじゃないですかね。でも明るくした方が治りも早い気がする」
歩んできた道のりではない。どう歩んできたか、が大事であることを一岡が教えてくれている。7月4日巨人戦では温めていた新球“パーム”を試投した。しかも相手は巨人の4番阿部慎之助。
「強打者の初球にも投げられた。競った展開でも使えるようになれば」
一岡はケガをする度に強くなる。