炎の一筆入魂BACK NUMBER
専門学校卒の星・一岡竜司。
広島で輝く、庶民派のド根性右腕。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/07/13 17:00
今季はすでに29試合に登板しており、安定的にチームを支えている。広島の連覇には一岡の活躍は必須条件である!
好調になると……いつも怪我で泣かされたが。
広島移籍後、一岡の前に立ちはだかったのは、ケガだった。順調な航路を描く度……ケガが一岡の行く手を阻んだのだった。
二軍スタートとなった'16年春季キャンプも右腕の痛みが抜けず、チームを離れた。ともに二軍スタートだった同世代の今村、中田とともに「頑張って一軍に上がってやろう」と言葉をかけ合っていたばかりだった。2投手が一軍でアピールを続ける中、一岡は1人、治療に専念する日々を送った。
診断結果は「右浅指屈筋損傷」だった。
再断裂の危険性をはらみ、治療とリハビリには慎重を期す必要があった。しばらくはボールを握れず、ランニングメニューを消化する毎日。キャッチボールを再開しても、最初は筋肉への負担を考慮しゴムボールからスタートした。テニスボール、軟式球、硬式球へと段階を経て、次第に距離と強度は上がった。
一軍復帰は6月。ブランクを感じさせぬ投球で27試合に登板し、防御率1.82と大瀬良とともに勝利の方程式を支えた。
だが、完全復活ではなかった。
安静が大事な怪我だが、オフにも投げ込みを続ける。
「浅指屈筋損傷」は筋肉を使わないことが最善の治療法。だが一岡は同年オフも投げ続けた。
「オフにノースローの時期を作る人もいますが、僕は投げ続けないといけないタイプ。腕にとっては投げない方がいいのかもしれないですけど、投げておかないと(シーズンに)間に合わない。器用じゃないから忘れてしまうんですかね」
リスクを背負い、薄氷を踏むように慎重に慎重を重ねながらシーズンに備えた。
気づけば広島4年目。
巨人に在籍した年数の倍のシーズンに入った。