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ジェイ「僕はとにかく勝ちたいんだ」。
磐田番記者が札幌に送る取扱説明書。
text by
青木務Tsutomu Aoki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/07 11:30
札幌はJ2時代に磐田のジェイと対決している。当時マーカーだった福森は、新たなターゲットとしてクロスを上げる役割を果たせるか。
名波監督も「アイツはボックスの中で止まらない」。
ジェイのストライカーとしての真骨頂は、シュートの上手さや決定力にある。しかし、それだけではゴールは奪えない。重要なのはそこに至る過程である。
「アイツはボックスの中で止まらない」
名波監督はこう評価してきた。一流のFWとその他の選手を分ける差は何か。現役時代、リーグを代表する点取り屋にゴールをプレゼントし続けたレフティーの言葉には重みと説得力がある。
チャンスがある限り、自身の欲しいタイミングでボールが来なくても足を止めず、すぐさま別のポジションへ移動する。得点から逆算した動きを繰り返し、先手を取るからこそラストパスを歓喜に結びつけることができる。
「ボックスの中で生きた存在でいないといけない。例えばヘディングも打つ瞬間ではなくその前の動きが大事なんだ」とジェイ本人も言う。いとも簡単にゴールを決めるように見えるが、シュートを放つまでに彼が何をしているか。そうした視点で見るのも面白いだろう。
ツインタワー結成でエース都倉もさらに輝くか。
昨季の磐田はサイド攻撃を武器に戦っていた。右サイドハーフの太田吉彰とジェイのコンビはチームの生命線で、右クロスからのシュートがひとつのパターンだった。札幌には福森晃斗という上質なレフティーがおり、ホットラインを築ければ大きな得点源となるはずだ。
そして、現在札幌の攻撃を一手に引き受ける都倉賢もさらに輝くかもしれない。攻撃の時間が決して長くないチームでここまでリーグ戦5得点を挙げるなど、最前線で奮闘している。ジェイとコンビを組むことでマークが分散し、背番号9に訪れる決定機の数も増えるのではないか。彼らがツインタワーを形成し互いに特徴を出せれば、相手に与える脅威も跳ね上がる。
また、ジェイの強みは“ツインタワー”以外の部分でも発揮できる。地上戦だ。
「自分はなるべく素早いコンビネーションプレーがしたい」と話したこともあるように、ジェイは足元の技術が高く、攻撃の組み立てへの参加も全く苦にしない。1.5列目で中盤と都倉を繋ぐ役割を担っても、水準以上のプレーを見せるだろう。
ただし、下がってパスを受ける回数があまりに多くなると、フィニッシュの局面にいないという状況が発生する。もし彼にゴールを求めたいのならば、ペナルティーエリア内での仕事に専念できる環境を構築すべきだ。