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ジェイ「僕はとにかく勝ちたいんだ」。
磐田番記者が札幌に送る取扱説明書。
posted2017/07/07 11:30
text by
青木務Tsutomu Aoki
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
元イングランド代表ストライカーは、降格危機のチームの救世主となれるだろうか。
J1第17節、北海道コンサドーレ札幌は清水エスパルスに1-0で勝利し、連敗を6で止めた。残留圏内の15位に浮上したとはいえ、状況は予断を許さない。後半戦での巻き返しを狙うクラブは、昨季までジュビロ磐田で活躍したジェイを迎え入れた。
筆者は現在、磐田の番記者を務めている。2016年まで磐田に所属したジェイはチームの得点源であり、類まれなゴール感覚で前年のJ2得点王にも輝いた。ピッチ内で放つ存在感はもちろん、そのフレンドリーな性格に取材の度に惹きこまれていった。その一方で感情の起伏が激しく、時にチームの和を乱すような振る舞いもあった。
「FWとして超一流だが、気難しい」
そんな心配をしている札幌ファンも多いのではないか。だからこそ今回は、ジェイの“取扱説明書”という形でジェイという人間、パーソナリティーの一端を知ってもらえればと思う。
「小魚か、鮫か。お前はどうなりたいんだ!」
左足から放たれるシュートは威力、精度とも抜群で、190cmの高さは空中戦での優位性を保証する。体格による存在感が目を引くが、技術とスピードも兼ね備える。昨季は22試合に出場し14得点をマークするなど、磐田のJ1残留に大きく貢献した。間違いなくゴール前での嗅覚はリーグ屈指のレベルだった。
普段は温厚で紳士的、ファンへのサービス精神も旺盛だが、試合になるとその表情は一変する。「ピッチの上ではライオン」と自身を百獣の王に例えたこともあれば、こんなエピソードも明かしている。
「幼い頃、お父さんにずっと言われてきたんだ。『小魚になるのか、鮫になるのか。お前はどうなりたいんだ』と。僕は、ただ水の中を優雅に泳いでいるだけの存在にはなりたくなかった。常にチャレンジしたい」
勝利への執着心は並外れて強く、その想いはジェイを獰猛なハンターへと変貌させる。名門・アーセナルの下部組織で育ち、世界を渡り歩いた男は負けることを決して受け入れない。
「勝ち点3を取るためにはどんなことでもする。そういう心構えで試合に臨まなければいけない。サッカーは単なるゲームではない。生きるか死ぬかの戦いだと育てられてきた」