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前田健太を苦しめた「日本スタイル」。
先発復帰のために必要だったこと。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byAFLO
posted2017/06/22 08:00
日本では通算28度の完投があったが、メジャー移籍後は0。短い回に全力を注ぐメジャースタイルを身につけたら、マエケンはさらに進化する。
「日本スタイルがまだ抜けきっていないのでは」
先発投手にとって立ち上がりは鬼門であるが、そこだけにフォーカスするわけにもいかない。それが先発投手というもの。前田もこんな言葉を残していた。
「立ち上がりは修正したいが、結局、ピッチングはトータル。初回が悪いから全部が悪いわけではない。初回に3点も3回に3点も結果的には同じ。トータルでしっかりとイニングを作り、勝てるピッチングが出来ればいい」
おそらく、先発投手であれば誰でも同じように答えるだろう。とは言え、3試合連続で初回に30球以上も要する投球は、チームの士気に関わるのも事実。昨年のポストシーズンからこの傾向が続いていた前田について、ドジャース首脳陣はある仮説を唱えていた。内情を知るロサンゼルス・タイムスのビート・ライターであるアンディー・マッカロウ記者が明かしてくれた。
「日本では先発投手は長いイニング、7回、8回、9回を投げるのが当たり前と聞きますが、こちらではまず全力を出し切らないといけない。日本スタイルがまだ抜けきっていないのではないでしょうか。まずは5回、6回をしっかり投げ切ることが大事であり、その後のことはそこから考える。前田は1回から長い回を投げることを考えているように見えるので、チームはそのクセを直そうと思っています」
メジャーの打者は、腹八分目では抑えられない。
前田の「ピッチングはトータル」の言葉と合わせて考えても、一理あると感じた。加えて、中4日を基本とするメジャーの短い登板間隔で日本人投手が全力投球を続ければ、肩、肘の回復が伴わず故障にも繋がる恐れもある。“腹八分目投法で長いイニングを”と考えるのは日本人投手にとって自然な流れである。
だが、世界最高峰の打者が居並ぶメジャーリーグはそこまで甘くない。前田自身もブルペンへの配置転換でそこに気付かされた。
「先発の時は探りながら、自分の状態とかいいボールを探りながら入って行くんですけど、探らずにと言うか、どんどんストライクゾーンで勝負していこうと」