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日本卓球界ニューヒロインの決意。
平野美宇「絶対的なエースになる」
 

text by

城島充

城島充Mitsuru Jojima

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2017/05/28 11:30

日本卓球界ニューヒロインの決意。平野美宇「絶対的なエースになる」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

平野の16歳9カ月での全日本優勝は、'88年の佐藤利香の17歳1カ月を更新する史上最年少記録だった。

リオで得たのは感謝の気持ちと、客観的に見る姿勢。

 日の丸を背負って戦う3人の練習パートナーはもちろん、球拾いも経験した平野は、初めて間近で触れたオリンピックをさまざまな思いで振り返る。

「いい経験になったと思うのは、スタッフの人たちに感謝の気持ちを持てるようになったことと、客観的に卓球という競技を見つめられたことです。美誠ちゃんとはずいぶん差がついちゃったなあって思いましたが、彼女に団体戦の銅メダルを胸にかけてもらった時、東京では絶対に自分の力でもっといい色のメダルを獲るんだって言い聞かせました」

 リオへ向かう時点で、新たなプレースタイルに手応えをつかみつつあった。

 '16年1月の全日本選手権女子シングルスで決勝まで勝ち進み、4月にはポーランドオープンで優勝。世界ランキングを11位にまであげていたからだ。リオ五輪後にメダリストたちが脚光を浴びるなか、10月にアメリカで開かれたワールドカップで日本人選手として初優勝を史上最年少で飾ると、平野美宇の名は再びクローズアップされた。

「ワールドカップで優勝できるなんて夢みたいだったし、新しいスタイルにすごく自信を持てました。その直後、中国の超級リーグへ参戦したのですが、ワールドカップの前は『こんな弱いやつが戦えるのか』って言ってたチームの監督が、優勝したあとは『やっぱり強いんだな。試合でも使うぞ』って(笑)。結果を出せば、周囲の見る目が変わることを実感しました」

石川佳純に「常識では考えられない」と言わしめた。

 そして'17年1月、リオでのメダル獲得で卓球人気が高まるなかで迎えた全日本選手権の主役になったのは、メダリストたちではなく、リザーバーの辛酸を味わった女子高生だった。

 東京体育館がどよめきに包まれたのは、前年と同じカードになった女子シングルス決勝の開始直後だった。4連覇を目指す石川が出したファーストサービスを、平野がいきなりスマッシュで返したのだ。

「私たちの常識では考えられない」

 石川がそう振り返ったほどのプレーだったのだが、観客が平野の変化にどよめいたのはそのシーンだけではない。バックハンドで石川のフォアサイドをノータッチで抜いたかと思うと、重心を低くしたフットワークと、力強くてコンパクトなフォアハンドでラリーを次々と制していく。3-1とゲームカウントをリードした第5ゲーム、8-3の展開から逆転されても、まったく動揺しなかった。

【次ページ】 対戦が決まった時点で相手があきらめてしまう存在に。

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