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伊藤美誠のコーチ松崎太佑の証言「中国は少し想像を超える強さ」収穫は急増する各国の“美誠対策”に打ち勝てたこと
posted2021/08/28 11:04
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
伊藤美誠は東京オリンピックの混合ダブルスで金メダル、女子シングルスで銅メダル、女子団体戦で銀メダルを獲得し、一大会で全色のメダルを勝ち取る偉業を達成した。
とりわけ混合ダブルスで金を取ったことは大きく、日本卓球界の歴史的な快挙になったことはもちろん、シングルスに向けて勢いをつけ、中国に対して大きな警戒心を植え付けるなど、今後の戦いに大きなアドバンテージを得ることができた。
小学4年生から伊藤を指導して、中学から専属コーチとなった松崎太佑は、混合ダブルスの表彰式で伊藤の胸に輝く金メダルを目に焼き付け、国歌を聞きながら翌日から始まる女子シングルスの戦いについて考えを巡らせていた。
松崎が伊藤と共闘した東京五輪は、どんな大会になったのだろうか。そして最強中国に対抗する秘策をどこに見出したのか。
◇◇◇
――東京五輪では混合ダブルスで金メダルという流れを、シングルスに繋げることができました。シングルスに向けて、気持ちはうまく切り替えられていましたか。
「金メダルを獲った後、美誠自身が『切り替えないと』と言っていたので、気持ちの切り替えはできていたと思います。もう少し年齢が低い頃は、それが下手でした。2016年世界ジュニアでは団体戦、個人戦の流れだったんですが、団体戦での優勝で喜び過ぎて、シングルスで2回戦負け。その経験を今回、活かせたと思います」
――シングルスでは順調に勝ち上がり、準決勝で中国の孫穎莎と対戦しました。対戦成績はジュニア時代から伊藤選手の2勝6敗、直近は4連敗とやや苦手にしていました。孫選手と対戦するにあたり、何か対策を講じたのでしょうか。
「中国人選手はもともと実力があり、しかも昨年、コロナの影響で1年延期になって自国でさらに力をつけていました。おそらく、彼女たちは日本人選手以外の相手とは何度やっても勝てるでしょう。一方、美誠は中国人選手を意識しないと金メダルは取れません。でも、実力的には中国選手だけを意識していたら他の海外選手に負けてしまうので、中国人選手だけにターゲットを絞るのは難しかった。総合的に実力を上げて、誰にも負けない選手になることを目指してやってきたので、大会中も(孫選手への)対策は特に考えていなかったです」