ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
牛の首投げ入れられてもCL出場!
RBライプツィヒとレッドブルの蜜月。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byAFLO
posted2017/05/06 09:00
大迫をタイトにマークするライプツィヒDFオルバン。胸スポンサーはもちろんレッドブルだが、左胸のクラブエンブレムもやはり2頭の牛が……。
「RB」はレッドブルではなく造語と言い張る。
その大企業とはエナジードリンクメーカーのレッドブル。オーストリア、アメリカ、ガーナ、ブラジルでプロクラブを運営していた同社は、'09年にドイツサッカー界へと足を踏み入れる。当時5部に所属していたSSVマルクランシュタットというクラブのリーグ参戦権などライセンスを買収し、新たにRBライプツィヒを立ち上げたのだ。
初代監督は前身クラブを率いていたティノ・フォーゲル。その後、6回の指揮官交代を経て、現在は49歳のラルフ・ハーゼンヒュットルが辣腕を振るっている。
世界に散らばるレッドブル社保有のクラブは、例外なくチーム名に『レッドブル』の名を冠している。しかし、ドイツサッカー界では20年以上の支援を続けている実績がないかぎり、クラブ名に企業名を盛り込むことは許されない。そこで頭文字が「Red Bull」を連想させる「RasenBallsport(芝生球技)」という造語を編み出し、RBライプツィヒとしての活動をスタートさせた。
ある意味、規則の抜け道を突く賢い命名だろう。しかし、歴史と伝統を重んじる他クラブのサポーターには、節操のないやり方にしか映らなかった。
中盤ボックス型のシステムで、開幕13戦無敗の快進撃。
反RBライプツィヒ勢力が怒りを募らせているのは、クラブ名だけが理由ではない。レッドブル社の資金力に物を言わせた強化を繰り返し、わずか7年でブンデスリーガまで駆け上がったサクセスストーリーに最も反感を覚えている。カネの力で成り上がったクラブに過ぎない、と。
RBライプツィヒにシンパシーを覚えるのは、世界的ソフトウェア企業SAPの支援でのし上がってきたホッフェンハイムくらいだろう。第5節に対戦したケルンのファンが相手チームバスを取り囲んだかと思えば、ドルトムントとアウクスブルクのウルトラスは、RBライプツィヒとのアウェーゲームをボイコットした。
一向に吹き止まない逆風に晒されながら、RBライプツィヒの選手たちは見事にピッチ上でのリスペクトを勝ち取った。近年のドイツでは珍しい、中盤ボックス型の4-2-2-2システムを採用し、開幕から13試合無敗の快進撃を見せた。