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リーチマイケル、代表復帰前の本心。
「ジェイミーはがっかりしたが……」
text by
村上晃一Koichi Murakami
photograph byKoichiro Matsui
posted2017/05/07 09:00
この6月に代表復帰を果たすと報道されているリーチマイケル。とはいえ辞退していた頃も彼の中には揺るがぬ信念があった。
ジェイミーはがっかりしていました。ただ……。
――ジョセフヘッドコーチからは、新しい日本代表でも、キャプテンをしてほしいと打診されていたそうですね。
「休みたいと話したら、『キャプテンシー(キャプテンの地位)を失うことになる、それでいいのか』と言われました」
――それでもいいと答えたのですね。
「そうです。キャプテンの地位のために日本代表にいたわけではありません。日本代表を強くしたいと思ってプレーしてきたのです。ジェイミーはがっかりしていました。ただ、『来るならハッピーな状態で来てほしい』とも言っていました。最終的には、東芝のクラブハウスに来て、『日本代表にINか、OUTか』と聞かれ、OUTと答えたら、席を立って行きました」
――チーフスで怪我をしているときに、休めたのではないですか。
「たしかにそうなのですが、リハビリでも走るし、筋力トレーニングもする。試合の分析もしていました。環境はずっとラグビーです。そこから離れていなかった」
中途半端な気持ちと体ではプレーしたくない。
――TLの休止期間に入って、完全なオフはあったのですか。
「1週間、ラグビーから離れました。今月、娘が3歳になって初めて誕生日を一緒に祝いました。心身ともに立て直しています」
――今の自分のパフォーマンスはピーク時と比べて何%くらいですか。
「60%くらいでしょう。正直に言えば、'15年のW杯で結果を出すために努力し、最高の状態で大会を迎えた。それが終わった時、次にすることが何も決まっていなかったのです。メディアに対して、'19年、日本で開催されるW杯を盛り上げるための発言はしましたが、気持ちは揺れ動いていました。目標が決まっていなかったから、この1年はすごく長く感じました」
――辞退した理由に、選手の待遇面の不満はありますか。
「それはありません。環境改善は大事だけれど辞退の理由ではない。もちろん、ラグビー協会が選手を休ませる期間を決めてくれたら嬉しかった。ニュージーランド協会は、W杯でいいパフォーマンスをしてもらうために、ダン・カーターやリッチー・マコウなど主力を休ませました。それがW杯の優勝につながった。日本も今、試合数の制限について選手と協会が話し合っているし、改善されると思いますが、現状では自分を守るのは自分しかいない。僕は桜のジャージーを着るときは100%のパフォーマンスを出さなければいけないと思っています。中途半端な気持ちと体ではプレーしたくないのです」