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「指示待ちが日本ラグビーの現状」
田中史朗、指揮官とともに改革を。
posted2017/05/06 07:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
ジャパンでふたりの“恩師”と再会した日本屈指のSHは、
すでに自らが果たすべき役割を理解していた。
Number916号の特集を全文掲載します。
W杯出場2回、日本代表スクラムハーフの田中史朗は、来年1月3日で32歳を迎える。初めてジャパンに選ばれたのは23歳の時だったが、今ではほとんどの選手が年下で、「フミさん」と呼ばれることが多くなった。
世界のラグビー界では、コンタクトに強く、キック力のある大型SHが主流となったが、166cmの田中には「クラシカル」な匂いが漂う。素早いパスアウト、大男にひるむことのない負けん気。2013年からスーパーラグビー(SR)のハイランダーズでもプレーし、「タナカ」の名前は南半球のラグビー愛好家たちに親しまれた。
そのハイランダーズで指揮官を務めていたのが、ジェイミー・ジョセフである。
「ジェイミーが日本代表のヘッドコーチになるという報せを聞いて、うれしかったですね。彼は身体が大きいので威圧感があって、怖い時は、怖いです(笑)。集中力が欠けたプレーをすると、めっちゃ怒るんですよ。すごく気持ちの部分を大切にします」
W杯中、ジェイミーからもらった1通のメール。
W杯を戦っている最中、田中には忘れられない思い出がある。ジェイミーからこんなメールが来たのだ。
「フミ、スプリングボクスに勝ったな! おめでとう! ところで、来年のSR、プレーするチームはもう決まっているかい?」
契約更新の申し出だった。おそらくW杯でのパフォーマンスを見てのオファーだろう。もう一度一緒にやろうと言ってくれたジェイミーの心意気がうれしかった。
ハイランダーズでは、ジェイミーならではのリーダーシップも目の当たりにした。'15年、SRのプレーオフで快進撃を続け、決勝にたどりついた。ハイランダーズはそれまで優勝したことがなく、選手たちは重圧を感じていた。大切な試合を前に監督は“鍵”を選手に配った。