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「どんどん選手生命を長くしたい」
葛西紀明、44歳が目指す五輪の先。 

text by

折山淑美

折山淑美Toshimi Oriyama

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photograph byGetty Images

posted2017/05/04 09:00

「どんどん選手生命を長くしたい」葛西紀明、44歳が目指す五輪の先。<Number Web> photograph by Getty Images

'90年代から'10年代にかけて世界を転戦し続ける葛西は今もなお充実のジャンプ人生を送る。

今はどんどん選手生命を長くしたいなと思っています。

 こう言って笑う葛西だが、ソチ五輪のメダリスト会見で「多分45歳や49歳になっても自分の体力や技術はもっと向上すると思っているし、ここまで来たら諦めないでいけるところまでいってみようと思う」と語り、外国人記者たちを驚かせた自信が揺るぐことはない。

 葛西の踏み切ってから前に進む空中スピードは世界トップクラスだと評価する、日本代表チームの横川朝治ヘッドコーチは、'16年1月の札幌大会でこう証言した。

「周りの選手が上手くなってきているのであまり目立たないが、葛西もちょっとずつ進化している。ソチ五輪の頃は踏み切りの精度や力の伝え方には少しムラもあったが、今はその精度もますます高くなっている」

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 葛西自身の向上心も衰える気配はない。

「若い頃、周りは30歳を過ぎたら引退していたけど、自分が30歳になって『全然出来るじゃん』と思ったらどんどん成績も出てきた。とはいえ企業に属しているので成績が出なかったら辞めなければいけない。僕も危うい時はあったけどしっかり成績を出して生き残ってこれたので、今はどんどん選手生命を長くしたいなと思っています。最近は野球などでも40代の選手が辞めて、数えるほどになってきている。だからカズ(三浦知良)さんや伊達(公子)さん、イチロー選手には頑張ってほしいですね」

もう最年長表彰台はいいから、最年長優勝ですね。

 11月25日にフィンランドで開幕した今季のW杯。葛西は開幕戦で18位になったあと、24位、26位と順位を落とし、第4戦、第5戦は上位30名が進む2本目に臨めなかった。「調子は悪くないが、踏み切りのタイミングが遅れてしまう」と不調に苦しんだが、12月17~18日のエンゲルベルク大会では2戦とも21位と少しずつ調子を戻しつつある。

「もう最年長表彰台はいいから、目指すのは最年長優勝ですね。うまく噛み合えば優勝できると思うし、一度勝てばポンポンと何勝か出来るんじゃないかな、という気がするんです」

 明るい笑顔を見せてこう語った44歳の、今季の“自然体”の挑戦に期待したい。

(Number特別増刊号『葛西紀明 焦らず、気負わず、諦めず。』より)

 シーズン最終戦でW杯史上最年長記録となる表彰台(3位)に立った葛西。今季を有終の美で締めくくった、その個人総合成績は15位で日本人最高位。44歳のその目に映るのは、ただ平昌五輪での表彰台だ。「金メダルを狙うしかない」とコメントした、この鉄人の物語はまだまだ続く……。
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