プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「次も行くぞ!」「勘弁してください」
WBCで化けた千賀滉大の精神力。
posted2017/04/13 17:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
これがこの右腕のポテンシャルである。
3月に行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で一躍、脚光を浴びたソフトバンク・千賀滉大投手が、4月11日の日本ハム戦で今季初白星を挙げた。
8回でプロ自己最多タイの137球を投げて6安打無失点。立ち上がりこそ制球が定まらずピンチの連続だったが、尻上がりに調子を上げて奪った三振は自己最多タイの13個。WBCで見せた「世界の千賀」の実力を証明する投球内容だった。
「最初はバタバタでしたけど、立て直せたのが良かった。辛い1週間を過ごしたくない一心で(練習を)やってきました」
リベンジを誓ったマウンドだった。
1週間前の帰国初登板となった4月4日の楽天戦では、また悪い癖が出て自滅した。3回に暴投で先制点を許すと、4回には四球と茂木栄五郎の3ラン、そして2つ目の暴投で一気に崩れ、最終的に7失点でKOされた。
一度、ストライクが入らなくなると歯止めが利かなくなるのは、昨年もしばしば見られた光景だった。
抑えなければと力み返って逆に自分を失う。千賀の課題を浮き彫りにする内容だった。
「ちゃんとした球を投げられていない。こんな結果になって情けない」
同じWBC組の楽天・則本昂大との投げ合いも意識過剰になる要因だったかもしれないが、試合後の本人はこう語ってがっくり肩を落とした。
2次R突破がかかる大一番の試合。1点リードでの起用。
「ムリです。もう勘弁してください」
千賀がベンチでこう訴えたのは、WBC2次ラウンド突破のカギとなったオランダ戦だった。
壮絶な打ち合いとなったこの試合で1点をリードした5回に3番手として登板。いきなり安打、二塁打で無死二、三塁のピンチを招く苦しい立ち上がりだった。
しかしここで踏ん張れた。