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古賀紗理那、五輪落選からの復活。
きっかけは木村沙織と仲間の言葉。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKyodo News
posted2017/03/22 17:00
レセプションの成功率は昨年から10%近く上昇した。古賀紗理那が代表に帰って来る日も近いはずだ。
木村沙織に呼び止められ、2人で泣いた日。
ワールドグランプリの最終日の夜に1人1人へ合否が告げられたため、落選した選手は五輪に出場する他の選手たちの部屋を回り「今までありがとうございました」「オリンピック頑張ってください」と感謝と激励を告げる、互いにとって苦しい時間を過ごす。
時計が深夜を回る頃、数名の選手と共に、古賀は全日本のキャプテンを務めた木村沙織の部屋を訪れた。
すでに涙を浮かべていた木村は、「ありがとうございました」と告げ、他の選手たちと一緒に部屋を出て行こうとした古賀を呼び止めた。
「紗理那は埋もれちゃダメだよ。どのプレーでも誰よりも上に、平均よりも上にいないといけない存在だから、とにかくこの悔しさを忘れず頑張って」
木村のTシャツで鼻水を拭きながら「頑張ります」と何度も言い、2人で抱き合って泣いた。
以前は苦手意識があったレシーブも大きく改善。
沙織さんの思いに応えるためにも頑張らなきゃ、やってやろう、と思う一方で、無力感も消えない。何とも言えない、複雑な気持ちでNECの体育館へ戻ると、チームメイトは「この夏はNECで一緒に頑張ろうよ」と温かく迎え入れてくれた。
普段から仲の良い、2つ年上の小山綾菜と食事へ行き、他愛もない話に笑ううち、少しずつ気持ちも前を向く。小山がサプライズで用意していた食後のデザートプレートに「おつかれさま。これから一緒に頑張ろう」と書かれたメッセージと、小山の「これが実力っちゃあ、実力なんだよ。神様が、NECで基礎をつくりなさいって言っているんだよ」という言葉に気持ちも晴れ、迷いと無力感が消えた。
体幹やハムストリングスなど、股関節周囲を鍛えるトレーニングに時間をかけ、コーチ陣の指導を受けながらサーブやサーブレシーブの練習に励む。すぐに劇的な変化が感じられたわけではなかったが、以前は「自分のところに飛んで来たら嫌だな」と思うこともあったサーブレシーブも、シーズンが始まる頃には「100%返せるわけではないけれど、崩されない自信はついた」と言うように技術も向上し、直接失点の本数は格段に減った。